©2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会

 生きてるだけでほんと、疲れる。

『生きてるだけで、愛。』のヒロイン、寧子の台詞である。25歳の彼女は夢も希望もあっていいはずなのに、鬱で働けず、日がな一日、布団のなかで過ごす。唯一、メールのやりとりをする姉もあきれている。そんな調子で恋人は大丈夫なのかと。

 同棲している津奈木は出版社に勤めている。文学青年だった彼は希望ではなかった週刊誌に配属され、来る日も来る日も書きたくないゴシップ記事を書かされている。心身共にくたくたになって、真夜中にやっと帰宅する。

感情に正直に生きるヒロイン

 一日中、家で過ごしていた寧子にとって、津奈木はたった一人の話し相手だ。怒涛のように話しかける寧子に津奈木は疲れ果てていて、生返事しかできない。気分を害して、暴れる寧子。なだめる津奈木。同棲3年目。毎日がその繰り返しだ。

©2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会

 はじめは「いったい、この女はなんなんだ」とあきれてしまう。上の世代の人なら、間違いなく、「喝!」と怒りだすだろう。働きもしないで、疲れて帰ってきた恋人にわめき散らす女。だが、次第に魅せられていく。こんな本音と建前が複雑に入り混じった世の中で、獣のように自分の感情に正直に生きられる人がいる。