2つの異なる役割を同時にこなす場合、片方での経験や状況が他方に対して影響を及ぼすことをスピルオーバーと呼ぶ。「副業解禁」はもちろん本業への好影響というポジティブスピルオーバーを狙ったものだが、副業で始めた事業が不振に陥り負債を抱え込むようなことになれば深刻なネガティブスピルオーバーとなる。周囲が異変に気付いた時には最早取り返しのつかない状況に陥っている可能性もある。

「ですから、定期的に個人面談をして会社として副業の状況を正確に把握するよう制度化しています」と荻野氏は明言する。

「全員スーパーマン」ではなく個々を活かす

 スタッフの働きやすさ(→ 社員満足)と、スキルアップ(→ 顧客満足)をどこまでも追求するノバレーゼだが、スタッフの採用に関しても方針は明快そのものだ。

「第一印象を大事にしています。お客さん目線で“この人になら自分のウェディングプランを任せたい”と思える人かどうか見ます。スタッフ自身がハッピーでないとお客様を幸せにできませんから、愛されて育った人かどうか、自己肯定感の高い人かどうかということを見ています」

 ノバレーゼは、サービス業としては珍しくスタッフのほとんどが直接雇用である。労働力不足が今後さらに深刻化していく中で、「全員スーパーマン」となることを強いることなく、一人ひとりが自分の特性を活かして長く働き続けられる会社にしたいと荻野氏は語る。

 ユニークな経営を展開する同社の動向から目が離せない。多角化戦略、グローバル戦略、業界改革については改めてご報告したい。

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