中国人留学生も動員

 中国共産党は対外戦略の基盤となる基本目標を掲げている。同報告書はその目標として以下の3点を挙げていた。

[1] 中国共産党の揺るぎのない支配の維持
[2] 国家経済の成長と共産党への忠誠を保つ豊かな社会の維持
[3] 米国と対等な国際的な影響力と威信の確立

 同報告書は、中国共産党政権がこれらの基本目標を達成するために具体的にどのような対外政治闘争を展開しているかについて、以下のようにまとめていた。中国側は「政治闘争作戦」という表現も使っているという。

(1)在外中国人の動員

(相手国内の中国大使館を拠点とする政府要員が、相手国に在住する中国系住民から政治工作や情報収集への協力を得る。中国系住民を徴募する際、協力を拒む相手には中国本国にいる親族への迫害をほのめかすことが多い。)

(2)在外中国人留学生の動員

(米国などに留学している中国人学生を、中国政府にとって好ましくない言論や研究への抗議に動員する。学生たちに相手国の大学でも議会でも中国政府の主張に反する意見を述べる人物とは対決し、非難させる。)

(3)相手国の大学など教育機関への支援

(中国の企業や団体に、米国などの大学へ巨額の寄付をさせ、中国の政策への支持を広げさせる。中国教育部が組織する孔子学院もその一例で、米国内で100、全世界で500にまで増加した。)

(4)相手国の特定の個人や研究機関への財政支援

(中国政府系諸団体が相手国の特定の政治家、学者、研究機関に財政支援をして、中国の利益を促進させる。中国側が経費を負担して、政治家や学者の訪中、中国要人との会見などを提供する。この種の相手を諜報機関の協力者として徴募する場合もある。)