家電や半導体で競争力を失ってしまった現在でも、日本の自動車メーカーが競争力を維持していることからも分かるとおり、こうした体制を構築することは、簡単には真似することができない。

 テスラは電池やモーターといった電気自動車特有の要素以外にも、極めて難易度の高いことに手をつけてしまったのである。

簡単なことがいかに難しいか

 筆者はロシアの某自動車メーカーに入り浸り、いかに自動車の車体を作ることが難しいかをイヤというほど体験した。

 この自動車メーカーの品質はロシア人からも酷評されている。性能が日本車に大きく差をつけられているだけでなく、品質が悲惨な状態であった。

 エンジンや電子制御などの技術が遅れているだけではなく、ハイテクではないはずの車体を作ることが全くできていなかった。

 出来上がった車は、へこみが見え、右と左で微妙に形が異なっており、塗装も異物を巻き込んでいるし、後から錆びるらしい。

 自動車のボディは別にミクロの精度が要求されているわけでも、特に錆びやすい素材を使っているわけでもない。

 まともな部品をまともに溶接すれば正しい形の車体ができるはずだし、普通に防錆対策をして塗装すれば錆びないはずだ。なぜそんな簡単なことができないのか。

 車体を作る工程を、順番に見て行くと、どうしてそうなるかよく分かった。

 まず、車体を作るための鉄板の品質が悪い。傷があり、異物がくっついたまま圧延されており、板厚が不均質である。