ニックの祖母の家の演出で使われたテオさんの作品。マレーシアのコロニアルスタイルの旧迎賓館「カルコサ・スリ・ネガラ」で撮影。(© 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.)

 日本で公開中のハリウッド映画「クレイジー・リッチ!」(原題:Crazy Rich Asians)は、シンガポール出身で米国在住の作家、ケビン・クワン氏著「クレイジー・リッチ・エイジアンズ(アジアのクレイジーな富豪たち)」を映画化したものだ。

 同小説は、米・ニューヨークタイムズ紙のベストセラーリストで第1位を獲得するなど、約20カ国で出版された国際的な大ヒット作だ。

 米国では、公開されるやいなや、興行成績1位を独占。過去10年間のラブコメディ映画で最高の収益を挙げている。

 その勢いは米人気女優ジュリア・ロバーツと米有名俳優のリチャード・ギア主演の大ヒット作「プリティ・ブライド」(1999年公開)を凌ぐ勢いで、ハリウッドにアジア旋風を巻き起こしている。

 映画は、ニューヨークで働く大学教授の中国系米国人のレイチェルとシンガポールの不動産王の御曹司のニックの恋愛物語を描いた。

 物語は2人がニックの故郷であるシンガポールに親友の結婚式のため、一時帰国することで巻き起こるラブコメディ。

 注目されている最大の理由は、白人優先主義「ホワイトウォッシング」が台頭するハリウッドで、この映画が「オールアジア」で製作されているからだ。

 監督は、今夏起きたタイの洞窟救出劇を描く映画でも指揮を執ることになっているジョン・チュー氏。原作者、監督、俳優もすべてアジア系で、舞台もシンガポールと、アジアというわけだ。

 ホワイトウォッシングに飽きた米国人にとって、そういった点が強烈なカルチャーショックで目新しく、人気を得ている点だが、地元・シンガポールでは、不満や反感の声も挙がっている。

 アジアの俳優と言いながら、東アジア系(特に華人系)が多く、「シンガポールが舞台なのに、マレー系やインド系が起用されていない。

 中国系富豪の下で働くブラウンアジア(東南アジア系)の存在を無視した最悪の作品」と手厳しい。また、話されている英語が、「欧米英語」で「シングリッシュ」でない、と批判しているのだ。

 また、原作者のクワン氏は11歳で家族とともに渡米。シンガポール国防省が今年8月末、クワン氏を兵役忌避の罪で、指名手配中であることを明らかにした。

 シンガポールでは18歳から2年間の兵役義務がある。1990年からシンガポール政府は通知を出してきたが、無視してきたと発表。

 逮捕され、有罪判決を受ければ、1万シンガポールドルの罰金か、3年間の服役、あるいはその両方が科されることになっている。

 クワン氏の兵役逃れの問題もシンガポール国民からの反感を買う要因になっているというわけだ。