けれども今の世の中は、人間の寿命は延びる一方で、会社や事業の寿命はどんどん短くなっています。そうなると、会社はもう完全な雇用を守れません。社員との約束を守れないような状況になっているのです。

 今や、社員はいつ会社から「もう雇用を守れません」と言われるか分かりません。そんなときに備えて、社員はいつでも転職できるような自分をつくっておく必要があります。「いつでも転職できる」という確信があれば、自由に生きていくことができます。私は、すべての人がその自由を得られるよう支援したいと考えています。

大企業に行くべきか、ベンチャーに行くべきか

──本書によると「転職に必要なのは知識でも情報でもなく、どう選べばいいかという思考法だ」とのことですが、なぜ知識や情報よりも「思考法」なのでしょうか。

北野 例えば、引っ越しをするとき、いきなり「家賃〇〇万円で、△△駅から徒歩□□分」と決め打ちして物件を探す人は少ないですよね。まずは、そもそも自分にとって何が重要か、どんな場所に住みたいのか、オフィスからどれぐらいの距離なら許容範囲か、といった基本的な条件を設定して物件を調べていくはずです。

 転職やキャリア設計においても、そういう思考法の枠組みやフレームワークが必要です。特に会社や国が守ってくれないこの時代においては、思考法こそが自分を守ってくれる命綱になります。

──その思考法は自分の体験から導き出されたものですか?