父親世代かそれに近い男性たちが意思決定をするブライダル企業が問題なのと同様に、男女を問わず親世代に近い年輩者たちが意思決定するブライダル企業もまた問題だと考えられるからだ。顧客ターゲット層から世代的に離れすぎているのは好ましくない。

 ノバレーゼの創業経営者・浅田剛治氏は、結婚式の中心顧客層を考えると、経営者も若い方がよいと考え、一部上場だった同社の株式に関して、自己保有分のみならず親族保有分まで売却し、2016年、47歳で引退。当時36歳だった荻野氏が後継社長に就任した。

 日本の企業経営者の平均年齢が約60歳で、大企業ほど年齢が高くなりがちなことを思えば、異例と言ってよいだろう。ノバレーゼが顧客層との“年齢的距離感”を非常に重視していることがわかる。

 また、同社の組織図を眺めると、社長の下に副社長・専務取締役・常務取締役などの役職は置かず、フラットな構造になっている。

「厳しい経営環境下にあって、現場との距離を縮めてマネジメントスピードを速くする必要があるからです。また、各部門を統括する執行役員には、2~3年前まで各現場のゼネラルマネージャーだった人々が就いており、自社が提供する価値と顧客ニーズの乖離が起きないようにしています」(荻野氏)

 “年齢的距離感”の短縮と経営判断に要する“時間的距離感”の短縮を同時に志向しているということだ。

 しかし、疑問もある。社長も役員も今はたしかに若いがやがて年輩となる。そうなれば、たちどころに、顧客層との“距離感”は遠いものになってしまうのではないか?