ブライダル業界の怪~女性が続々退職し年輩男性が意思決定

 ノバレーゼは、資本金1億円、従業員数1966人(連結、パート・アルバイト含む)で、平均年齢は32.1歳。国内各地に婚礼施設30、ドレスショップ19、レストラン5(他に海外1)を展開し、売上高は163億5600万円。2018年3月には対前年比1000組増の披露宴受注4000組を突破するなど、業界の躍進企業である。

「業績向上のカギは、女性が働きやすい環境を整えることです」

 荻野氏の答えは極めて明快である。

 最近では様々な業界・企業において、女性社員が出産後、育児休業を経て復帰できるようになってきているが、古い体質の業界・企業では、今なお育休後の復職が難しく結婚・出産を機に退職するケースが多い。

 ブライダル業界はまさにそうした古い体質だと言われている。そのため、本来多くの女性スタッフが勤務しているにもかかわらず、キャリアを重ねて社内で意思決定できる立場まで上がるケースは多くなく、基本的には年輩男性たちの世界となっている。

 経験のある読者もいるだろうが、挙式・披露宴に関するプランニングや手続きは、女性(新婦)のイニシアチブの下、男性(新郎)は後ろからついていくだけ・・・というカップルが多い。つまり、挙式披露宴は、女性(新婦)の夢を紡ぐ場であり新婦が“主役”である。それにもかかわらず、ブライダルサービスを提供する企業で意思決定をしているのは、父親世代かそれに近い世代の男性である。それは顧客にとって最善のことなのだろうか? 顧客ニーズとブライダル企業の提供価値の間に乖離が生じているのではないか? それが業界の苦境の真因なのではないか?

 荻野氏は、そうした問題意識から、全スタッフの約6割を占める女性たちが継続して勤務できる仕組み作りを重視したのである。

ノバレーゼの郊外型ゲストハウス(結婚式場)「アマンダンブルー鎌倉」