原油市場はいつ「供給過剰」に気づくのか

バブルの様相を呈する中、無視されている「悪材料」

2018.10.12(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54347
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 原油価格の見通しに強気だったゴールドマンサックスは10月5日、「原油市場は来年再び供給過剰に陥る」との見解を示したが、2016年前半以降活況を呈してきた原油市場に再び「冬の時代」が到来するのだろうか。

米国が中東の「警察官」ではなくなる日

 最後にサウジアラビア情勢についてコメントしたい。

 このところ公の舞台から姿を消していたムハンマド皇太子が10月5日、ブルームバーグのインタビューに登場した。

 トランプ大統領は10月2日にミシシッピー州で開かれた選挙集会で米国の増産要請に応えようとしないサウジアラビアに苛立ち、「米軍の支援なしではサウジアラビアのサルマン国王の権力は2週間ももたないだろう」との侮辱的ともとれる発言をした。それに対してサウジアラビア側は正式な反応を示していなかった。米国との良好な関係を誇るムハンマド皇太子は、「主要産油国は最近日量約150万バレルの増産をしており、イラン産原油の供給減を補うための対応は実施している」とした上で、「米国とは良好な関係を続けているが、若干の誤解が生じた」と釈明するにとどめた

 筆者がインタビューで最も注目したのは「企業価値が2兆ドルを超えるとされるサウジアラムコのIPOを2021年初めまでに実施する」との発言である。IPO計画に関わっていた投資顧問チームが解散したとの報道についてムハンマド皇太子は「サウジアラビアがこの計画を中止したことはない」と述べたが、市場関係者の間では「本当に上場するのか」と疑う見方は依然根強い。

 サウジアラビアは原油高を追い風に2019年は経済成長に資する支出拡大を目指している(10月1日付ブルームバーグ)。だが、金食い虫であるイエメンでの軍事費は一向に減る気配はない。シーア派反政府武装組織フーシは、ミサイル攻撃は続け、原油タンカーまで拿捕したとの情報がある(10月8日付OILPRICE)。また、イエメンへの軍事介入を批判し続けてきたサウジアラビア人ジャーナリストのトルコ領事館での殺害疑惑は、米国とサウジアラビアの関係を冷え込ませるリスクとなりつつある(10月10日付ブルームバーグ)。「米軍がサウジアラビアを守る」とのトランプ大統領の言葉とは裏腹に、米軍は中国やロシアの脅威に備えるためにパトリオットミサイルを中東地域から撤去する動きも進んでいるようだ(9月26日付ZeroHedge)。

 原油価格が下落し中東地域の政情不安が高まった場合、シェール革命でエネルギー自給に自信を深める米国は引き続き「警察官」の役割を担ってくれるのだろうか。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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