原油市場はいつ「供給過剰」に気づくのか

バブルの様相を呈する中、無視されている「悪材料」

2018.10.12(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54347
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原油市場は再び「冬の時代」に?

 強気一辺倒の原油市場のセンチメントも近いうちに変わるのではないだろうか。筆者は、その変化は米国のイラン産原油に関する制裁が発動される11月4日以前に訪れるのではないかと睨んでいる。

 米国の圧力にもかかわらず、イランの主要な取引先である中国やインドの企業が11月分についても取引を継続すると報じられており(10月5日付OILPRICE)、「実際の制裁が発動されてもイラン産原油の輸出量がゼロにならない」と市場関係者が判断すれば、イラン産原油の輸出量がゼロになるという「恐怖」により高くなりすぎてしまった原油価格は大幅に下落すると見込まれるからである(噂で買って事実で売る)。

 原油価格が下がれば、逆に米国経済への打撃は大きい。シェールオイルの一大産地であるパーミアン鉱区の企業群が苦境に陥ってしまうからである。

 パーミアン鉱区のシェールオイルの生産量は過去最高を更新しているが、生産コストも上昇し、企業は利益を生み出せなくなっている(10月5日付ロイター)。パーミアン鉱区のシェールオイルの生産量は過去3年間で2倍以上となったが、生産量の増大に輸送インフラが追いつかず企業側が輸送コストを負担しているため、実際の利益は米国産原油の水準よりも1バレル当たり17ドルも少なくなっている。

「豊作貧乏」で赤字操業を強いられている状態で原油価格が大幅に下落すれば、2015年末から2016年上旬と同様にシェール企業が大量倒産するだろう。3年前は金融市場での動揺は生じなかったが、クレジットサイクルが下落局面にある現時点で同様のことが起きれば、ジャンク債ばかりか株式市場にまで多大な悪影響をもたらしかねない。

 株価が下がり金融市場が変調をきたせば、好調な原油需要が冷え込む可能性が高い。

 前述のエコノミストの記事は「原油高は不況の前触れよりというよりも不作法な客に近い。今度ばかりはいかにもタイミングが悪い」と締めくくっているが、イラン産原油の輸出量の減少を上回る他の産油国の増産という供給側の要因に加え、新興国に加えて米国の原油需要も冷え込めば、ダブルパンチで原油価格はさらなる下落を余儀なくされるだろう。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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