原油市場はいつ「供給過剰」に気づくのか

バブルの様相を呈する中、無視されている「悪材料」

2018.10.12(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54347
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 国際エネルギー機関(IEA)のピロル事務局長は10月8日、「世界経済が勢いを落としつつある悪い局面でエネルギー価格の上昇が戻ってきた。消費者だけ生産者にとっても今後悪いニュースになるだろう」との認識を示した(10月9日付日本経済新聞)。

 英誌エコノミスト(10月4日付)は「不都合なタイミングの原油高騰」と題する記事の中で「原油価格は一番上がってほしくない時に高騰するという特徴がある。例えば2007年だ。世界が既に金融危機に向かい始めているタイミングで1バレル=100ドルに迫り、世界経済の足を引っ張った。この意味で現在も上がってほしくないタイミングだ」と指摘する。リーマン・ショック後の世界経済で大きなウェイトを占めるようになった新興国にとって、米国の金融引き締めによる「ドル不足」に加え、原油高による経常収支の悪化という追い打ちとなるからだ。

 21世紀の原油需要を拡大させた最大の原動力だった中国経済は、成長の勢いが衰え、エネルギーを大量消費したかつての姿から変わりつつある。米国との貿易紛争の影響で9月の製造業指数は悪化している。英石油大手BP幹部が「来年は米中貿易摩擦の影響で原油需要が脅かされる」との見解を示した(9月25日付ロイター)ように、中国経済は原油需要の面で今後マイナス材料に転じる可能性が高い。

 原油需要の面で「第2の中国」と期待されるインドはさらに深刻な状況である。通貨ルピー安と原油高がインド経済にとって二重の逆風となり、政府は緊急支援に必要な資金を国際金融市場に求めざるを得ない状態に追い込まれている(10月3日付OILPRICE)。

 米国では、シェール企業への恩恵が大きいことから、原油高の打撃は相殺されるとの見方が強い。米国の株式市場が好調さを維持しているのは信用スプレッド(ジャンク債と米国10年債の利回りの格差)が拡大しないことにあるとされている。信用スプレッドは長期金利が上昇する局面で、驚くことに2007年以来の水準に縮小した。ジャンク債市場が好調さを維持しているのは、ジャンク債市場の発行体の15%を占めるシェール企業の経営環境が原油高により改善するとの思惑からである。

 だが、信用スプレッドは景気後退(リセッション)前に縮小する傾向があることから、市場関係者の間で「クレジットサイクルの終わりが近づいている」との見方が広まっている(10月4日付ロイター)。リーマン・ショックの直前の2008年7月に原油価格が1バレル=147ドルに高騰したように「景気サイクルの最終局面ではコモディティが上昇する傾向が顕著である」との指摘もある。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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