関係者が舌を巻く鈴木誠也の練習量

 好素材を獲得するドラフト戦略が種を植える作業とするならば、水を与えながら育てるのは現場の仕事だろう。ここにもカープには一日の長があった。緒方監督は「選手の成長は、99%選手自身の力。何が足りないのかを分析してコーチが本人に気付かせる。それの繰り返し」と話す。

 潤沢な資金のあるチームのように、1年で中心選手を加えることはできないし、だからといって「タナキクマル」のような主力が一朝一夕で育つものでもない。中長期的な視野でのチーム作りが求められる。

 その点、広島には猛練習で鍛え上げる伝統がある。

 セ・リーグ2連覇を果たした後の昨年の秋季キャンプ(2017年11月7~21日)。例年以上に多くの若手を帯同させた緒方監督にあったのは、「若い選手の突き上げは必要。戦力の底上げをしなければ」という強い思い。

 グラウンドには猛練習を課しながら、戦力を見極める「広島野球の原点」があった。

 そしてそこにいたのが、まだ練習生だったヘロニモ・フランスアなど今シーズン、穴を埋めた若手たちである。フランスアはこの秋季キャンプで通用する可能性を示したからこそ育成契約があり、今春の1軍キャンプ参加を勝ち取ることができたからこそ、今がある。アドゥワ誠も、高橋昂也も歯をくいしばった。

 若い選手の成長を促しただけでなく、主力のさらなる成長も求めた。昨年MVPを受賞した丸は秋季キャンプも完走した。4番の鈴木も本拠地ナイター戦前の早出特打に加わり、振り込む。その練習量は、球団関係者すら「4番があれだけ練習するんだもんな。そりゃ強くなるよ」と漏らすほど。

 主力の後ろ姿を見て、若手が続く。それが広島に脈々と受け継がれている。