違いを面白がり学ぶ姿勢

 筆者が、仮説ではあるが、提案したいのは「違いを面白がる」ことだ。

 私は、考え方が全然違う人と話すとき、違っていることを面白がるようにしている。「なるほどー! そんな風に考えることもできるんですね」「私ならこうしてしまうんですけど、そういうやり方もあるんですね」と、感心する。すると、相手はどんどん乗り気になって自分のやり方を話してくれる。私はそのつど驚き、面白がる。

 すると不思議なことに、相手も私のやり方、考え方に興味を持ってくれるのだ。違うことに腹を立てるどころか、自分と違うやり方、考え方を面白がってくれるようになる。

 筆者のところで働いてくれるスタッフの方々、あるいは指導を受けに来る学生には、自分のやり方を無理に押し付けないようにしている。相手が分からないというなら一応教えるけれど、それなりにうまくやれているなら、結果がきちんと出るなら、別のやり方でもこだわらない。そして、違うやり方そのものを面白がるようにしている。

 すると、「こんな勝手なことをして大丈夫だろうか?」と不安げな顔をしていても、ホッと胸をなでおろしてくれる。そうした方が不思議と、私のやり方を聞きたがり、自分のやり方よりも優れていると思えば取り入れてくれるし、相手のやり方の方が優れていると思われたら、筆者の方がそのやり方を面白がり、取り入れるようにしている。

 自分のやり方、考え方に同調するよう圧力をかけるのでもない。相手のやり方を尊重すると言いながら、「自分は自分、他人は他人」と、慇懃無礼に距離を置くのでもない。違うやり方、考え方を面白がる。すると、相手は心を開き、私のやり方の長所も認めてくれるようだ。

 筆者の小さな体験を、M&Aのような大きな案件に敷衍(ふえん)してよいのかどうかは、ちょっと慎重になる必要がある。しかし、さまざまな成功例、実践例を拝見するに、「違いを面白がる」というのが、共通点として感じられるのだ。