「英語やスウェーデン語で国際社会の歓心を買いそうなヒューマニズムのポーズを取る際には、トレンドどおり『死刑制度そのものに反対』と宣伝してみせ、返す刃で、こちらは必ず日本語だけですが、死刑存置の世論が高い国内読者向けには、『「私は死刑制度には反対です」とは、少なくともこの件に関しては、簡単には公言できないでいる』と、時と場所によって見解を使い分けていることを自ら露骨に記してしまいました」という。

 そして、「現状を追認し、およそ理想的な方向に国内外世論を導かないのみならず、こうした現実を自己PRに利用する姿勢そのものに、倫理の観点から強い疑問を抱かざるを得ません」と締めくくる。

 ネット検索すると、作家・評論家で元東大総長の蓮實重彦氏や評論家の柄谷行人氏などからも「厳しい言葉を浴びてきた」ようだ。

 ストックホルムで活躍するジャーナリストで「ノルウェイの森」など7冊の村上作品を共訳しているデューク雪子(50)氏は「アカデミーから漏れ聞こえてくる声は『才能は十分認めるが......』なんです。『......』をはっきりは言わないんですが、何かが望まれている。深みというのか......。軽すぎると思われているんじゃないですかね」と語っている。

 村上氏が米国の敏腕の出版代理人と組んで声価を上げ、ベストセラーを連発していったことから、「商業主義的な作家」とみなされ、アカデミーの「重厚好み」とはズレがあるかもしれないという批判もある。

 当然ながら、肯定的な評価もある。

 日本の近現代文学を研究し、イタリア文化会館東京館長を務めるジョルジョ・アミトラーノ氏は、「村上は世界のどの作家の追従も許さないほど、現代という時代の本質をつかみ取っている」と断言している。

 不安な時代をどう生きるか――。ポップな文体で重いテーマを語り、ドストエフスキーを敬愛していることでも知られると評価される村上氏でもある。

 しかし、「重いテーマ」を語っている割にはセックスや歴史認識などでは能天気に軽い記述としか思えない部分がある。