さすがのトランプ政権も、貿易転換(注1=貿易協定の締結などにより、貿易相手となる国が変わること)が自分たちに不利に作用することには気づくかもしれない。

 どういうことか。まず、米国が中国からの輸入をやめ、例えばベトナムからの輸入に切り替えるとしよう。そして、一律に10%の関税をかける。

 すると米国以外の世界全体が、米国製品に10%の関税をかけて報復してくる。このケースでは、米国が短期的に損をするうえに中国が得をするとECBは見ている。

 貿易戦争では、経済規模の大きな方が損害は軽い。

 失われる貿易額の経済全体に対する比率が小さく、その分だけ重要性も低いからだ。米国以外の世界全体の経済は、米国経済の3倍の規模を有している。

 米国は、知的財産や市場の自由化については中国と取引できるかもしれない。

 しかし、中国との貿易収支を均衡させたり、中国の経済発展を止めたりすることについて取引をすることはできない。

 同盟国との緊密な協力があれば、そうした取引も可能かもしれないが、米国が純粋な二国間主義に固執していたら勝つことはない。

 それどころか、自分自身や貿易、世界経済、そして国際関係にダメージを与えることになる。

 貿易戦争は良いことではない。大国の場合は、簡単に勝てる戦(いくさ)でもない。

By Martin Wolf
 
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