――オーナー経営ではない日本の大企業の場合、社長は任期が過ぎると交代します。新しい社長がオープンイノベーションに対して理解がなかったら、取り潰しになることが考えられませんか。

秋元 もはや自前主義ではままならない時代です。その中で、オープンイノベーションは例えばR&D(研究開発)と同じだと思うのです。景気の変動などによる投資額の上下は仕方がないとしても、継続的に取り組むべき活動です。

 ただ、経営者によって考え方の差異があり、「儲かっていないならストップだ」と言われる可能性もあるでしょう。そこで、私たちがオープンイノベーションをお手伝いさせていただく場合、一定レベルのフィナンシャルリターンも実現できる仕組み、取り組みを考えましょう、と提案しています。経営層ががらりと変わったとしても継続を主張できるようにするには、とにかく数字が大切ですから。

 そうは言ってもフィナンシャルリターンを得られるようになるまでがとにかく難しい。いわゆる「Jカーブ」のへこみをどう乗り越えるかが大きな課題です。そこで踏ん張れるかどうかは、やはり経営層の理解が欠かせません。産業界全体におけるオープンイノベーションに対する理解の醸成が必要です。

――ハードルが高く、悩ましい課題が多いですね。

秋元 しばしばスタートアップ企業やデジタル技術の話題だと、「シリコンバレーはすごい、日本は駄目だ」という話になりがちです。しかし、私としては日本企業にとってやりやすい、日本ならではのやり方があっていいと考えています。特に日本の場合は大企業がスタートアップ企業に出資して育てるというエコシステムがこなれてきています。これが発展して、大企業とスタートアップが相互に刺激し合い、発展していくシステムが確立することを願っていますし、VCとしてお手伝いができればと思っています。