大企業がオープンイノベーションを成功させるには、組織体制・人事評価制度をスタートアップ企業に近づける必要がある(写真はイメージ)

「大企業のオープンイノベーションは、どんな形のものであれ、まず取り組んでみることが大切だ。それが“ごっこ”的なものでもかまわない。しかし、成功させたいなら、経営陣による本気の関与が必要だ」

 こう語るのは、トランスリンク・キャピタルの秋元信行氏。同氏はドコモキャピタルCEO、NTTドコモ・ベンチャーズの副社長としてスタートアップ企業への投資を手がけてきた。ドコモ在籍中に約10年間米国西海岸に駐在し、2017年7月にシリコンバレーに拠点を置くトランスリンク・キャピタルのマネージングパートナーに就任。ベンチャーキャピタリストの立場から、主に国内の大手企業におけるオープンイノベーションの支援に取り組んでいる。

 トランスリンク・キャピタルは近年デジタル戦略の推進で話題になっているSOMPOホールディングスのコーポレートベンチャーキャピタルファンドの運用を請け負い、秋元氏はこのプロジェクトに携わっている。同ファンドは、SOMPOホールディングスがデジタル戦略のさらなる推進を狙って2017年7月に立ち上げた。主にデジタル技術を扱うスタートアップ企業をターゲットとしていることが特徴である。

 秋元氏は、大企業におけるオープンイノベーション成功のポイントを大きく2つ上げる。1つは経営者の決断。もう1つはオープンイノベーションに関わる人員の人事評価体系を別個用意することである。前編・後編の2回にわたり、秋元氏へのインタビューを基にオープンイノベーションのポイントを探っていく。(前編/全2回)

「破壊者」の登場で自前主義は崖っぷち

――ここに来てオープンイノベーションに取り組む日本の大企業が増えています。なぜ今、オープンイノベーションに注目が集まっているのでしょうか。

秋元信行氏(以下、敬称略) 理由は大きく3つあると見ています。1つ目は、既存の延長線上ではもう市場に対応できなくなっていること。2つ目は、手をこまねいていると本当に新規のディスラプター(破壊的な新規参入企業)に破壊されるという危機感が強まっていること。そして3つ目は、横並び意識です。要するに他社もやっているのでうちもやってみようか、ということです。中には“オープンイノベーションごっこ”のような取り組みもみられますが、私はそれも決して悪いことではないと思います。