2000年頃のドットコム・バブルの時も、オープンイノベーションに注目が集まりました。大手企業がこぞってシリコンバレーに足を運び、スタートアップ企業への投資と協業を加速させました。しかし、バブルが崩壊した途端にごっそり手を引いてしまいました。

 では、当時と最近の盛り上がり方の何が違うのかというと、外部環境の変化です。ビジネスのライフサイクルが短期化し、市場のニーズが多様化していることが、既存の大企業を大きく揺り動かしています。これまでのアプローチがことごとく通用しなくなっている現実にあらためて直面し、オープンイノベーションでスタートアップ企業と共に成長する可能性に活路を見いだそうとする企業が増えています。

――自社だけではなかなか変われない、ということでしょうか。

秋元 いわゆる「自前主義の限界」を、以前よりも強く実感している大企業が増えています。

 特に、破壊的なイノベーションを実現して短期間で市場構造をがらりと変えるベンチャー企業が次々と登場してきていることが大きいでしょう。例えばウーバーやAirbnbなどは、既存の業界にとってはまるで思いつかなかったような方法で顧客体験を変えてきました。近年は、こうしたベンチャー企業の破壊的な存在感が、誰にでもよく見える形で現れています。これは大企業の経営者にとって相当なプレッシャーとしてのしかかってきているはずです。

 また、想定していなかった他業界の企業が突然ライバルになり、自社の存在を脅かすというのも、ここ数年の市場環境の特徴です。自動車業界はその象徴で、グーグルやアップルをはじめとしたIT企業の参入が日本の自動車メーカーの経営戦略を急転させています。これまで以上に幅広い領域に目配せをしておかないと対処できず、必然的に自前主義を捨てざるを得ない方向に進んでいます。

トランスリンク・キャピタルの秋元信行氏