ソフトバンクの孫正義氏も、ユニクロの柳井正氏も、「経営者が重要な意思決定を行うには、『事実』『解釈』『打ち手』の3つがセットになっていないと行えない」と言っています。どうでしょうか? ソラ・アメ・カサは、こうした一流経営者の要求に十分応えられるツールということが理解いただけるでしょうか。

 ソラ・アメ・カサの活用で肝なるのは「アメ=解釈」です。「事実をどう解釈するか」で想定されるゴール像は変わってきます。ゴール像が変われば判断・打ち手も変わることは明白でしょう。

 事実の解釈により、アメは無数に存在するわけですが、日本語の特性として、アメは往々にして省略されてしまいがちです。これが意思疎通の妨げになっている場合が非常に多いのです。

 付き合い始めのカップルが、デートの途中で夜空を見上げているシーンを想像してください。

「夜空がきれいだね」

「うん、そうね」

 一見、お互いの意思は通じているように見えます。しかし、「きれい」の意味を突き詰めてみると、「星がたくさん出ていてきれい」「満月が大きくくっきり見えてきれい」「水面に映る満月と波紋がきれい」「町の灯りと星の光のコントラストがきれい」「流星群がきれい」「夜空に関係なく実は浴衣姿の君がきれい」など、同じ「夜空という事実」でも、解釈により、きれいと感じるポイントが違っている可能性があります。「アメ=解釈」の部分をきちんと伝えていないと、その違いに気づかないままやり過ごしてしまうことになります。

 このように、一見「伝わった、理解し合えた」と感じていた関係が、実は大きな誤解の上に成り立っていたということが後々発覚すると、危険です。プライベートなら関係修復の可能性も残されているでしょうが、上司や取引先とのやり取りの中で生じた「解釈のズレ」に気づかず放置している事態は、ビジネスでの致命傷になります。

 適切な解釈を生み出すポイントは次にあげる2つです。

・事実の「どこに」焦点を当てるか

・焦点を当てた事実を「どう」解釈するか

「どこに」と「どう」の部分を自分の中で明確にし、ソラ、アメを導き、最適の「カサ=判断」に繋げることが大切です。

 簡単な例で説明しましょう。

  ソラ(事実)「加湿器が欲しいというお客様が来た。相見積もりして安い方を買うと言っている」

 それに対するアメはこんなものが考えられます。

 アメ1(解釈)「壊れず長期間、安定的に使える商品を望んでいそうだ」

 アメ2(解釈)「経費予算がなく、価格が安い方を選択せざるを得ないのかもしれない」

 アメ3(解釈)「加湿器だけでなく、実は保湿機能付きを欲しいのかもしれない」

 アメによって、それぞれ打ち手も変わります。アメ1であれば「品質がよく壊れないのでランニングコストを考えて10年使うならお得」という提案が考えられるでしょう。アメ2であれば、「安く導入してもらい、部品や手入れなどのメンテナンスコストで調整して回収する」となるでしょう。アメ3になると、加湿器が欲しい理由を確認する必要がありますが、仮に喉が弱くいたわりたいのなら、加湿・保湿機能に加えハウスダストやカビ除去ができる空気清浄機能の付いた製品を提案する方向が見えてきます。

 このようにソラ・アメ・カサはシンプルに物事を整理し、判断し、相手に正しく伝え、認識合わせができる、優れもののツールなのです。

ソラ・アメ・カサは誰でもすぐ身に着けられる

 ソラ・アメ・カサの思考法を身につけるのは簡単です。物事を考え、誰かに伝える時に「ソラを伝えたので次はアメ、最後はカサ」と順番を守って話すクセをつければすぐ習慣になります。「ソラ」「アメ」「カサ」の3つが揃っていればいいのです。

 人はたくさんのポイントを言われると記憶できず判断ができません。「ポイントは7つあります」と言われても実際は覚えられないでしょう。「ポイントは3つまで」と心得ましょう。その意味でも、ソラ・アメ・カサはポイントを3つに絞ってくれる便利ツールなのです。

 いかがでしょう。「ソラ・アメ・カサは使えそう」「ラクに身に着けられそう」と感じてもらえたのではないでしょうか。そこで次回からは、具体的な事例を使ってソラ・アメ・カサの実践法について解説していこうと思います。