エストニアでは、1991年の独立の回復*1後に大胆な教育改革を断行した。ちょうどインターネットが普及した時期であったので、世界に先駆けてインターネット環境を全学校に整備し、プログラミング教育も始めた。

 一定の学力の水準の定めは国がしているが、それを達成する方法については、各学校に自治権(autonomy)を与えている。その方が、学校が責任感を持って教育に当たるので創造性(creativity)が発揮され、いい効果が得られる。また、生徒には16歳で基礎教育が終了する際に、クリエイティブアサインメント(creative assignment)を課すが、これは生徒各自が自由にエッセイを書くもので、自主学習を促す効果がある。

 事細かに国が指示するより、各学校の自主性に任せる方がいい。それで、経済協力開発機構(OECD)のPISA学力調査テスト*2で、日本と並ぶ高得点が得られているのだ。そして16歳のクリエイティブアサインメント。それでこそ生徒のアクティブラーニング、自主的な学ぶ姿勢が育まれているのではないかと理解した。

OECD学習到達度調査(PISA)2015年調査、上位10カ国の結果。グレーの網掛けは非OECD加盟国・地域を、* は2015年調査において筆記型調査で実施した国を示す。
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 思うに、教育改革は、敗戦とか独立回復とか、国家が根本的に転覆するような大事件でもないと、本当には進められないのかも知れない。それがエストニアの場合には1991年と、インターネット時代であった。

 日本では1945年なので、まだインターネットは影も形もない時期であった。それまでの軍国主義を排し、自由主義、民主主義の教育に転換することまではできたが、インターネットを前提とした教育改革まではできなかった。

 その日本でも、2020年にはプログラミング教育を始めると言っているが、単純に言えばエストニアの30年遅れということになる。

*1 Restoration of Estonian Independence:エストニア人にとって建国はロシア革命後の1918年であり、今年(2018年)がちょうど建国100周年に当たる。
*2 Programme for International Student Assessment:15歳の子どもを対象とした国際的な学習到達度調査。