イギリスのメイ首相も直後からロシアの関与の可能性に言及していたが、同12日にはさまざまなインテリジェンスからそれを事実上断定し、同14日にはロシア情報部員と思われる外交官23人の国外追放を発表。対するロシアはあくまで事実無根を主張し、逆にイギリス外交官を追放するなど、泥沼の対立関係になっていた。

ロシア国営テレビに登場した容疑者

 ウクライナやシリアなどでのロシアの軍事介入の場合もそうだが、ロシアの悪辣な秘密活動に関して、彼らがフェイク情報を駆使して欺瞞を堂々と通すことは、もはや国際政治の常識となっている。この件でもロシアの犯行であることは明らかだったが、犯人は当然、本国に帰還しているだろうこともあり、イギリスとロシアの主張は平行線のまま経過した。

 しかし、実はイギリス当局はこの被害者であるスクリパリ元大佐の周辺や、イギリスで活動するロシア情報部員の活動などをかねてから監視しており、そんな調査からついにこの9月5日、犯人2人を特定する。それは「ルスラン・バシロフ」と「アレクサンドル・ペトロフ」という名義のロシア旅券を持つ2人組だ。イギリス捜査当局は2人のイギリス入国からの行動を監視カメラ映像などから確認して犯人と断定。顔写真も公表するとともに、欧州逮捕状を発行して国際手配した。

元スパイ襲撃、ロシア人容疑者らの「観光」主張を国内メディアも疑問視

ソールズベリーを歩く、英当局がロシア人元二重スパイ暗殺未遂事件への関与を断定したアレクサンドル・ペトロフ(右)とルスラン・バシロフとされるロシア人2人の姿。ロンドン警視庁提供(2018年3月4日撮影、同9月5日公開)。(c)AFP PHOTO / Metropolitan Police Service〔AFPBB News

 それによると、2人は3月2日にモスクワからロンドンに到着。翌3日に短時間ソールズベリーを訪問。いったんロンドンに戻って、翌4日に再びソールズベリーに向かい、その4日当日のうちにロンドンからモスクワに向かった。まさにソールズベリーで短時間過ごすためだけにイギリスを訪問していたわけだ。なお、2人が宿泊したロンドン東部のホテルからもノビチョクの痕跡が検出されている。