こうした例は先進企業の多いニューヨークでもよく見られるもの。まさに「ハードよりもソフトが重要」ということを象徴しているケースといえる。

 このソフトとは「人が集まる仕組み」と言い換えてもいい。例えば、東京駅周辺は丸ビルができたことにより大きく変わった。さらに日本橋口前も開発中の「東京駅前常盤橋プロジェクト」によって変わっていくだろう。

再開発が進む都心部の未来予想

 ではこれからの「再開発」はどうなっていくのだろうか。佐久間氏は2020年以降についてこう予測する。

「丸ビルに代表されるAクラスビルの賃料は、2019年後半にピークを迎え、以降2022年前半まで下落に転じることが予想されます。理由は18年〜20年に多くのビルが竣工して供給過多になり、また、19年10月に予定される消費税増税により景気が一時的に落ち込むと予想されるため。しかし、大規模ビルは21〜22年に落ち着いたのち、23〜24年以降にまた大きな供給が始まります。今後も虎ノ門、八重洲、常盤橋などに大きなビルが誕生し、大規模ビルの供給は続いていくでしょう」

 こうした状況は、例えば企業のCRE戦略などに大きな影響を与えていくだろう。

「企業が不動産を所有しておくだけ、というのは右肩上がりの時代、または変化の少ない時代だからこそできたことなんです。各企業は『今後変化が起こる』ということを認識する必要があります。その時代の変化に対し、差別化が難しいコモディティ化した不動産で対応するには、ハード(箱)ではなくソフト面で価値を高める必要があるということ。『オフィス=働く場所』『ホテル=寝る場所』ではなく、もう一歩踏み込んだ価値を提供しなければならない時代に入ってきているのです」

 ハードからソフトへの収益構造の移行は、パソコンの例を見てもよくわかるはずだ。活発な再開発が示すのはソフトの時代という事実なのである。