上空から見た関西国際空港。右側が1期島、左側が2期島。(資料写真、出所:Wikipedia

 このところ自然災害によるインフラの被害が相次いでいる。日本経済は弱体化しており、基本インフラを次々と刷新していくほどの体力はない。すでにあるインフラを活用しつつ、リスクを分散させる知恵が求められている。

地盤沈下が続く関空、今後も警戒が必要

 近畿地方を襲った台風21号は、関西の空の玄関口である関西国際空港に甚大な被害をもたらした。台風による高潮の影響で空港が冠水。陸との唯一のアクセス手段だった連絡橋に、強風で流されたタンカーが衝突するというトラブルも発生し、一時は乗客3000人が孤立する事態となった。

 関空は沖合5キロに埋め立て方式で作られた人工島だが、建設当初から地盤沈下への対策が最大の課題とされてきた。開港時と比較するとすでに3メートル以上も沈下が進んでおり、現在でも毎年数センチのペースで沈み続けている。

 同空港は2つの島で構成されており、埋め立て工事が行われた時期の違いによって、それぞれ1期島、2期島と呼ばれている。各島には1本ずつ滑走路があり、1期島にはメインのターミナルビルが、2期島にはLCC(格安航空会社)専用の簡素なターミナルビルが建設されている。

 被害を受けた直後の空撮写真を見ると、1期島にある滑走路の一部と滑走路に至るまでのタキシーウェイ(誘導路)のほぼすべてが冠水していた。また航空機を停めておくエプロン(駐機場)の一部にも水が押し寄せている。しかしLCC専用ターミナルがある2期島はまったく冠水していなかった。

 同空港のスペックを見ると、冠水した1期島の滑走路(RWY06R-RWY24L)は標高が1.5メートル程度しかない。