中国空母が台湾海峡を通過、中台の緊張高まる中

中国空母が台湾海峡を通過、中台の緊張高まる中。写真は香港に到着した中国の空母「遼寧」(2017年7月7日撮影、資料写真)。(c)AFP/Anthony WALLACE 〔AFPBB News

 台湾は、国際社会では「地域」として扱われることが多いが、正真正銘の「国家」である。

 国家とは、明確な領土領域、永久的住民および統治機関が備わっている有機的な組織体をいい、近代国家の統治機関は一般的に、立法、行政および司法の三機関から成り立っている。

 すなわち、民主主義国においては、領土領域の住民である国民が、主権者として法律を制定し、法律に基づいて住民に対する行政が行われ、法律違反の疑いがあれば司法機関によって有無罪の判断が下される仕組みを整えた組織体が国家であり、国際法上の人格をもつ主権国家は外交能力を備えている。

 いずれに照らしても、台湾は十二分に条件を満たしており、国家と定義することに全く疑問の余地がないからである。

 しかしながら中国は、「台湾は中国の一部であって、台湾問題は中国の国内問題である」との基本原則を主張して曲げず、「一つの中国」の原則は中台間の議論の前提であり、基礎であるとしている。

 中国の全国人民代表大会は2018年3月、中国共産党の指導的役割を明記し、国家主席の任期を2期(10年)までとしていた規定をなくす憲法改正案を圧倒的賛成多数で可決した。

 習近平国家主席は、任期制限がない中国共産党トップの総書記、人民解放軍トップの中央軍事委員会主席を兼務しており、このたびの憲法改正で終身国家主席の地位を手に入れたことによって、いわば「中国皇帝」として長期君臨の体制を確立したことになる。

 中国には、習国家主席が地盤とする「浙江閥」「太子党」のほかに、前々国家主席であった江沢民が率いる「上海閥」、前国家主席を務めた胡錦濤の「中国共産主義青年団(共青団)」派の3大派閥による権謀術数の権力闘争が繰り広げられてきた。

 しかしそのような中で、なぜ、習国家主席の独走・独裁を許すに至ったのかについては、様々な議論があるが、台湾問題の解決が大きなウエイトを占めていると見られている。

 中国の憲法は、その前文で「台湾は、中華人民共和国の神聖な領土の一部である。祖国統一の大業を成し遂げることは、台湾の同胞を含む全中国人民の神聖な責務である」と定めている。

 そして、中国は、平和的な統一を目指す努力は放棄しないと表明しつつも、台湾を「核心的利益」と呼び、中台統一に対する外国の干渉や台湾独立運動に対して反対する立場から、武力行使も辞さないことを定めた「反国家分裂法」を制定している。

 それを盾に、習近平主席は、香港返還(1997年)そしてマカオ返還(1999年)を成し遂げた今、最も困難な台湾問題を解決して祖国統一の大業を完成し「中華民族の偉大な復興」の夢を実現するには、強力な指導者に率いられた長期安定の政治体制が必要であると主張した。