さらに、2018年4月には台湾海峡で実弾演習を行うとともに、海空作戦や着上陸作戦のための軍事演習・訓練を増加させており、台湾に対して一段と軍事的圧力を強めている。

 このような中国の軍事的圧力は、台湾初の総統直接選挙の直前の1996年3月、台湾海峡で弾道ミサイル発射と3軍統合演習を行った軍事恫喝を想起させるものである。

 前述のとおり、中国の軍事展開能力は、当時と比較して格段に強化されており、台湾国民に「四面楚歌」の心理を植え付けるには十分であり、今後、その恐怖は強まることはあっても弱まることはないであろう。

対国内工作:台湾国内の混乱助長と抵抗意志の弱体化

 近年、台湾では、中国のスパイ活動が政治、経済、国防や情報、文化、イデオロギーなどあらゆる分野に浸透し、特に民進党政権となって以降、その活動が一段と強化されている。

 台湾で暗躍する中国のスパイの数は、5000人以上と見られ、台湾メディアの調べによると、中国のスパイ容疑で逮捕された事件は2002年以降だけでも60件(2017年3月現在)に上っているが、これは氷山の一角だと言われている。

 政府関係者によると、このうちの9割が軍事機関に集中しており、例えば、中国人民解放軍を退役した鎮小江・元中将が、台湾の政界および軍の関係者を買収して台湾の戦闘機に関するデータを入手した罪で、2016年に4年間の禁固刑を言い渡された。

 台湾史上最大の中国共産党スパイ事件となった。

 また、台湾国防部の陳中吉報道官が、「我が軍の退役軍人が中国に行った後、買収されました。弱みを握る、高額な報酬を持ちかける、ハニートラップにかける、などです」と公表したような事件も起きている。

 中国人民解放軍が国境に迫ってくる前に、台湾軍は敗れてしまう恐れがあるとの警戒心も高まっている。

 一方、政界では、中国との統一を主張する政治団体「中華統一促進党」が中国当局から資金を得て、反「台湾独立」運動や民進党の蔡英文政権への抗議活動に人を動員していた疑いが持たれている。

 同党は、八田與一の銅像を破壊した反日団体としても知られおり、中国は台湾を併合するために、政界をターゲットとして政治工作にも力を入れている。

 また、2期8年にわたった民進党・陳水扁政権の後、国民党の馬英九が総統に就任した頃から、台湾のマスメディアの報道・言論空間のなかに中国の影響力が浸透するようになっている。