2003年に中国を発端とする重症急性呼吸器症候群(SARS)が近隣各国や北米にも伝播するという事件が起き、台湾でもSARSの流行が深刻な社会的混乱を招いた。

 これを契機として、台湾を世界保健機関(WHO) から排除することが、台湾だけではなく他国への脅威になり得ることを国際社会に認識させた。

 紆余曲折はあったが、台湾は、ようやく2009年からWHO総会へのオブザーバー参加が認められるようになった。

 しかし、中国は、「一つの中国」原則の受け入れを拒んでいる、民主進歩党(民進党)の蔡英文政権が発足した2016年5月前後から、国際社会に圧力をかけたため、2017年5月のWHO総会へのオブザーバー参加が認められなかった。

 そればかりではない。

 経済協力開発機構(OECD)の鉄鋼委員会(2016年4月)、国連食糧農業機関(FAO)漁業委員会(同年7月)、国際民間航空機関(ICAO)総会(同年8月)、国際刑事警察機構(ICPO)総会(同年11月)、国際放送協会からの台湾国際放送の排除(2017年6月、失敗)、東アジア・ユース・ゲームズ(2018年7月)など、台湾の国際空間を閉塞させるべく、ありとあらゆる国際組織や会議への台湾不招待やボイコットを執拗に働きかけている。

 最近では、中国が外国の民間航空会社に台湾を中国の一部として表記するよう強制したことも記憶に新しい。

 一方では、中国の圧力によって、台湾と外交関係のある国々が次々と断交に追いやられる「断交ドミノ」が急速に進んでいる。

 蔡政権下で台湾と国交を断絶し中国と国交を樹立した国は、時期的順に、西アフリカの島国サントメ・プリンシペ(2016年12月)、中米パナマ(2017年6月)、同ドミニカ共和国(2018年5月)、西アフリカのブルキナファソ(同年5月)、中米エルサルバドル(同年8月)であり、すでに5か国との断交に追い込また。

 今後、南米パラグアイや大洋州パラオなどの断交の動きも取り沙汰されている。

 現在、台湾が外交関係を維持しているのは、中南米や大洋州などの17か国となった。いずれも大国の利害に大きな影響を及ぼさない小国であり、台湾の国際的悲哀を象徴している。