民進党の現立法委員で、次期台南市長選に立候補予定の黃偉哲氏は、緑色陣営系メディアの『自由時報』の9月11日付け記事のなかで以下のように話している。実に歯切れの悪いコメントだが、大意を訳すことにしよう。

“慰安婦事件は簡単に言えば、戦時中に日本軍部が台湾・韓国などの国家の女性を軍中の慰安婦の仕事に就かせたもので、どのようにして(女性らが慰安婦に)なったにせよ、ともかく相当多くの女性は非自発的(な就業)だったのであり、これはおそらく日本政府に対して厳しく非難をおこなうべきものだ。ただ、このことと現在の日本政府には関係がないわけだが、しかしながら日本政府の態度は非常に重要なのであり、(日本政府が)歴史に向き合うことを望むかどうか、これが実に重要だ”

 

“しかしながら、いかなる政党もこのこと(=像蹴り事件)で政治的な操作をおこなったり、選挙のなかでの利益を得ようとすることは好ましくない”

 

 2016年の女性総統誕生ブームの熱気も沈静化した昨今。蔡英文や民進党の支持率が頭打ちになり、今年11月の統一地方選をどう切り抜けるかで頭を悩ませている大変なときに、日本から来た市民活動家が「いらんこと」をやりやがって・・・、と内心で苦々しく思っているのであろう。

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 日本国内で保守的な論調をとる日本会議系や幸福の科学系の政治活動家やそのシンパには、中国への反発感情ゆえか「台湾好き」(≒「親日」とみなされがちな民進党・緑色陣営好き)を公言する人が少なくない。だが、そうした人たちの行動が逆に、民進党陣営を思い切り追い詰める結果を生んでいるのが、今回の像蹴り事件というわけだ。

 与野党の別を問わず、台湾のみなさんに大変ご迷惑をおかけしている今回の一件。日本国内での報道量は決して多くないのだが、決して同様の事態が再発することがないように祈るばかりである。