田原 Yahoo!ニュースとかも、基本的には他が取材して記事にしたものを再掲載していて、自分たちでは取材をしてないスタイルですよね。

土屋 そうです。そういうビジネスモデルが当たり前だから、当たったものをパクることに全く躊躇いがない。

 怖いのは、その影響がテレビにも出てきているところです。パクることに抵抗がない感覚の人間がテレビ局に入ってきて、同じことをやろうとする。例えばテレビ東京の『池の水ぜんぶ抜く』が当たったから、俺たちも似たようなことをやろうと。実際にそういう趣旨の企画募集を行った局があると耳にしました。それやったら駄目だと思う。新しいものを生み出さないと、テレビは駄目になる。

 今のところインターネットがコンテンツ面でテレビに遠く及ばないのは、そこに原因があると思うんですよ。要するに、テレビに当然できないこととか、今までネットの中で誰もやったことないことを探す気がないんですよ。「とりあえず、すぐに再生数が稼げるもの」とか「ページビューが伸びそうなもの」という視点でコンテンツを見繕おうとしている。だから「これが当たっているからパクってみよう」という発想になる。

筑紫哲也氏と誓った「視聴率7~10%」での勝負

田原 僕はね、亡くなった筑紫哲也さんと仲良かった。筑紫さんはTBSの夜の報道番組をやってたでしょう。その筑紫さんとよくこんな話をしてた。「いくらいい番組をやっていても視聴率が取れなきゃつぶされる。つぶされないための、『生存視聴率』っていうのがあるよね」と。

土屋 生存視聴率ですか。

田原 そう。それが7%くらいなんですよ。「7%取らないと、いくらいい番組だと評価されてもつぶされる。だからお互いに7%は絶対に取とろう」と。

 ただし10%以上取ろうとすると、視聴率を取るためのゴマすり番組になる。だから、筑紫さんと僕は「7%から10%の間で勝負しよう」と話し合っていた。『電波少年』も、そういうのはあるでしょ。

土屋 そうですね。視聴率は大事ですけど、その数字を稼ぐために、他所で数字を取っている企画を真似して引っ張ってこうようとし始めたらダメになります。

田原 それは意地でもやらないよね、土屋さんは。

土屋 他がやってないことを考えます。香港からロンドンまでヒッチハイクで行ってみるとか、全裸で懸賞はがきだけ書いて生活するなんていう企画は、はじめは面白いかどうか分からないけれど、とにかく誰もやったことがない企画でした。だからやってみたわけですが、番組ができて見てみるとちゃんと面白い。

 でも、今でもそういう心意気あるテレビマンは各局にいると思いますよ。

田原 いると思うね。

土屋 そういう人材を守ってあげられる偉い人がいるかどうかも、テレビ局の運命の分岐点になると思います。表向きは怒ってみせても、「でも、お前の気持ちは分かる。頑張れよ」って言ってあげるか、あげられないか。

 インターネットでコンテンツを流している企業の経営者だって、真っ先に再生数のことを口にしないで、「とにかく面白いことやろうぜ」っていうムードを作っていったら、たぶんどこよりも面白いものが出来ると思うし、インターネットの可能性がより開くと僕は思いますね。

次回に続く

◎(その1)はこちら
「『電波少年』が日テレ社長をアポなし取材した理由」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54010