2009年度予算成立後、麻生太郎首相は衆院解散・総選挙を決断するのか。政局の焦点はこれに絞られてきた。最短ケースでは「3月解散―4月26日総選挙」が取り沙汰されるが、与党内には「4月解散―5月総選挙」の見方も強い。これより先送りすれば、9月の任期満了に限りなく近づく。自民党内には下野覚悟の上で「予算成立後にイチかバチかの総選挙を」との声が出ているが、すべて麻生の決断次第だ。(敬称略)

 「予算が成立した時点では、もはや解散・総選挙する以外に、政府・自民党としても選択肢はない」。民主党代表・小沢一郎は1月31日に地元・岩手に入り、県連大会の会合でこう語った。

 これに先立ち、都内で開かれた同日の全国郵便局長会の会合でも、「首相は予算審議の最中ということで辛うじて政権を維持している。従ってどんなに遅くても、予算が成立した3月に解散、そして4月に総選挙ということは間違いのない事実だ」と強調している。

 小沢の見通しはこれまでに何度も外れているので、絶対的なものではない。とはいえ、3月中に予算が成立すれば、まずはその時が麻生にとって国民に信を問うべき絶好のチャンスとなる。

 解散を条件に、予算案・関連法案の年度内成立に協力する「話し合い解散」。小沢の狙いはこれだ。麻生から呼び掛けがあれば、小沢は前向きに応じる意向を示している。

 2月1日のNHK番組で、自民党幹事長の細田博之も「3月いっぱいでほとんどの懸案が解決すれば、その成果を国民に問えばどうかという空気が出てくるのではないか」と語った。党内の常識的な見方を紹介したに過ぎないが、ずるずる解散を先送りするより、予算成立後の解散が望ましいと考えているに違いない。

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 だが、麻生は「話し合い解散」に否定的な考えだ。予算成立後の解散を決断するか否かは、その時の内閣支持率や景気動向にも左右されよう。

 予算成立直後の解散の可能性は五分五分というより、3割程度にとどまり、先送りの方が7割ではないかと筆者は見ている。20%を切った内閣支持率が反転せず、景気も上向かない場合、麻生は解散を躊躇(ちゅうちょ)するだろう。

 「首相は『5月ごろ景気が下げ止まり、地方を中心に光が見えてきてほしい。その状況を見て新たに補正予算を組みたい』と言っている」。1月31日、麻生派の山口俊一首相補佐官が講演でこう漏らしたのはなぜか。2009年度予算が成立していない段階で、首相が5月以降の2009年度補正予算案提出を検討していると公言したのである。

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 山口は、与党内に浮上している3~4月の解散論を打ち消し、「解散は5月以降、補正予算案が争点になる」との見方を打ち出したかったのだ。当然、麻生の了解を取った上での発言だろう。麻生にとって、解散時期の選択肢を広げることは悪くないし、支持率回復に時間をかけたいと思ってもいよう。

 自民党内には「春に解散やるぞ、やるぞと見せかけながら、首相は求心力を維持し、任期満了まで引っ張るのではないか」(中堅)との憶測もある。支持率が20%以下であれば、結局はそうせざるを得ない。恐らく、麻生は7月8日からのイタリア・サミット(主要国首脳会議)には何としても出席したいのだろう。麻生の頭に政権延命しかないのであれば、春の解散は先送りされる可能性が高い。

 その一方で、予算成立後に解散のタイミングを逸すれば、9月の任期満了前の「総裁選前倒し論」がいずれ自民党内で高まってこよう。「麻生以外なら誰でもいい。新総裁で解散・総選挙を」という声に、麻生は退陣を余儀なくされるかもしれない。