新たな国産車の復活を模索するマレーシアのマハティール首相。車好きで知られ、ナジブ政権によって廃止になったF1グランプリ誘致も、マハティール首相が主導した。5月の政権交代後、93歳でフェラーリを運転し、「F1レース復活もあり得る」と語る(クアラルンプール郊外)

 「マハティール首相は中国の古き良き友人。ASEAN(東南アジア諸国連合)以外で初の外遊国に中国が選ばれたのは、中国に対する重要性と友情の証。今回の訪問が両国にとって利をもたらすことを期待する」

 中国政府は、中国の李克強首相招待の下、17日から5日間の日程で、中国を公式訪問中のマレーシアのマハティール首相(以下、マハティール氏)の来中を前に、そう熱烈歓迎の意を表した。

 外国公式訪問としては、6月末のインドネシア訪問以来、2回目。6月に5月の政権交代後、日本に初外遊し、先々週、再度、日本(九州)を訪問した知日派のマハティール氏を“やんわり”牽制し、面子を保とうとする中国ならではの歓迎のメッセージとも捉えられる。

 しかし、内心は熱烈歓迎とは無縁だ。

 「中国は、61年与党政権が続いてきたマレーシアで、まさか歴史的な政権交代が起きるとは予想していなかった」(マレーシア政府関係者)という。

 「PH(マハティール氏率いる野党連合「希望同盟」)だけでなく、これまでの野党の歴史や活動についてもほとんど知識がなく、ナジブ政権を支援しておけば安泰と踏んでいた中国は、新政府の情報収集に右往左往」

 「当然、選挙戦中に中国側が“古き良き友人”と慕うマハティール氏を表敬訪問することは1回もなかった。選挙後、その無礼に中国政府の代表者がマハティール首相に陳謝した」と明かすほどだ。

 そんな中国の“期待”を裏切って、15年ぶりに野党の代表として首相に返り咲いたマハティール氏。

 今回の訪中直前の米メディアとのインタビューでも「中国主導の大型プロジェクトはマレーシアに必要ない。廃止、あるいは、延期を視野に入れている」とマレーシアの国益重視の一貫した姿勢を貫き、中国での再交渉前の戦術として、大国を揺さぶっている。

 93歳の“老兵”だが、3300万人を率いる百戦錬磨の小国の“兵”だ。