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ショット前に食い入るように「ブック」に見入るジェイソン・デイとキャディ(筆者撮影、以下同)

(文:舩越園子)

「グリーンブックを禁止する」――そんな提言が7月末にUSGA(全米ゴルフ協会)とR&A(ロイヤル&エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース)から連名で発表され、今、プロゴルフ界が密かに大揺れしている。

「大揺れ」なのに「密かに」とは一体どういう意味かと言えば、昨今のツアープロたちにとってグリーンブックはライフセーバーのような存在で、それが禁止になるのは大事件。だから「大揺れ」なのだ。

 だが、グリーンブックはグリーンを読む際のアンチョコみたいな存在ゆえ、それが禁止になることを大っぴらに「とんでもない!」と反論するのは「一流のプロフェッショナルとして、あまりよろしくないかも?」ということなのか、選手もキャディも口をつぐみがちである。だから「密かに」動揺しているというわけだ。

 しかし、ここまで読んで、「そもそもグリーンブックって何?」と首を傾げている方々のほうが、きっと多いことだろう。それもそのはず。グリーンブックの存在は、日本ではほとんど知られていないからだ。

肉眼以上のハイレベルな傾斜を記述

 米ツアーの選手やキャディがグリーンを狙ってショットを打つ際、あるいはグリーンオンした後にパッテイングする前、コースの形状や距離などを細かく表記してある「ヤーデージブック」を広げて見入っている姿をテレビ中継などで見かけたことはあると思う。

 だが、よく見ると、彼らの多くはヤーデージブックとは別にもう1冊、よく似たブックを広げている。あるいは、ブックではなく1枚の紙を折り畳んで持っている場合もある。

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