トップマネジメントが変革への断固たる意志を示し続けてきたことが、IQOSの完成に繋がったという。

 では、研究開発施設「キューブ」の労働環境で、優れた点はどこにあると考えているのだろうか。

 「キーワードは、コラボレーションです。キューブではオフィスの隣にラボが並ぶ作りになっています。また噴霧ラボのすぐ近くに臨床試験のラボがある……というふうに、異分野の研究室やオフィスが互いに隣接したレイアウトになっています」

 「そのため分野の違う研究者やエンジニアたちが、オープンにコミュニケーションを取れる環境が備わっている点が優れていると思います」

 キューブでは、実に幅広い研究が行われている。

 製薬会社と同等の精密な基礎研究が行われているラボもあれば、たばこの煙とIQOSの噴霧の成分を比較するために、たばこを「吸って吐く」行為を繰り返すロボットが稼働している試験室もある。

 また、IT企業の開発現場を思い起こさせるIC制御の開発現場もあれば、時計の修理工房のような電気デバイスの試作品を手作業で作っているラボもある。

 まったくジャンルの違う研究や開発が、近接した場所で行われていて、意見や情報を交換しながら研究開発が行われてきたと、ベイカー博士はいう。

 「たとえばIQOSの電子部品が1つ変更になれば、それによって噴霧にどのような変化が起こるのか、有害性はないのか、ユーザーの使い勝手はどうか、といったことを即座に各部門が分析し、互いにフィードバックをしながら全体を調整しなければなりません」

 「その点、キューブではすべての部門がまるで1つのチームのようになって、同じゴールに向かって進んでいくことができます。ここはとても重要なところだと思います」

 もしも組織が細分化され、セクションごとに管理されていたなら、開発は困難なものになっていたに違いないということのようだ。