「かつて松下電器の創業者、松下幸之助さんが『会社は社会の公器』だと言いました。今、フィリップモリスは、公器になるためのチャレンジをしているんです」

 「私たちが掲げているビジョンを理解して、そこにコミットしてもらえば、必ずパッションを感じてもらえるはずです」

 井上副社長が言う、フィリップモリスのビジョンとは、煙のない社会を目指す、というもの。

 健康リスクを軽減する製品を開発することで有毒物質を含む紙巻きたばこを社会からなくし、喫煙による病気をなくすことで、世界の公衆衛生に貢献する会社に生まれ変わることだ。

 そのビジョンを理解し、そこにコミットメントをすることが、PMJで働く人たちのパッションの源泉になっているという。

キーワードは「コラボレーション」

ジゼル・ベイカー博士(撮影:榊智朗)

 それは、研究機関で働く科学者やエンジニアも同じなのだろうか。

 6年前からスイスのキューブでIQOSの開発に参加し、臨床研究の設計から試験の実施、データ分析のすべてに携わってきたジゼル・ベイカー博士に、その疑問をぶつけてみたところ、

 「この研究施設からIQOSという革新的な製品が生み出された最大の要因は、会社に明確なビジョンがあったからだと思います」

 と、彼女も迷うことなく答える。
 
 「フィリップモリスの経営陣は、たばこが人間の身体にとって有害であることを認めた上で、そこから離れようという強い意志を持ちました」

 「そして、それに代わる健康リスクを削減した製品を開発することで、世界の公衆衛生に貢献するというビジョンを描きました」

 「CEOがさまざまな場面でビジョンをメッセージとして私たちに伝え、同時に、そのために燃焼させない技術が必要だということをトップダウンで示しました」

 「ですから、私たち研究開発に取り組むスタッフの中で、方向性がわからない人は1人もいません」

 「イノベーションを可能にしたのは、会社がビジョンを示し、私たちが向かうべき方向を常に明確にしたことと、それが少しも揺らがなかったことです」