「Digital Innovation Leadership」の会場

 デジタル技術を武器に既存業種を次々と飲み込もうとする、米大手IT企業を中心とした「デジタルディスラプター(破壊的イノベーター)」の脅威。そこに立ち向かい、イノベーションを生み出して生き残るために企業が打つべき手とは――。

 6月20・22日に開催されたセミナー「Digital Innovation Leadership」(JBpress主催、KDDI特別協賛)から、そのヒントと解決策を探ってみたい。「デジタル変革で飛躍する組織戦略」をタイトルに掲げた本セミナーでは、日本企業が取り組むべき、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の進め方、組織のつくり方がさまざまな角度から提示された。

スクラムの「強力な効果」を大企業に

「年間170億ドルもの費用をかけ、週3台の軍用車両の修理しかできなかった米陸軍倉庫が、作業のやり方を変えただけで、破壊された車両を1日40台も新車に再生できるようになったのです」――。こんな変革事例でスクラムの強力な効果を強調したのが、アジャイル開発の標準的な手法「スクラム」を提唱し、そのコーチをおこなっているScrum Inc.(スクラム・インク)CEOのJJ・サザーランド氏だ。

Scrum Inc. CEOのJJ・サザーランド氏

 ジャーナリストでもあったサザーランド氏は、2011年のエジプト革命の際、NPR(米公共ラジオ局)の取材チームでもスクラムを実践、様々な問題から機能不全に陥っていたチームを改善することに成功した。

 スクラムは、効率的なアジャイルチームを組織するためのフレームワークだ。小さなチームをつくりプライオリティ(優先事項)を決め、短い「スプリント」期間内に処理することを繰り返す。頻繁に顧客からフィードバックを得たり、進捗の確認やプロセスの見直しをすることで、状況変化に対応し、より高い価値を顧客に提供。完成後に、ニーズに合わないことが判明するといったリスクを減らし、より正確な仕事を実現する。従業員も、チーム内の知識共有でスキルが向上し、自律的な意思決定ができるので高いモチベーションにつながる。