aMoonでは日本でのパートナーを探しているという。「高齢化にまつわる課題は国を超えて共通の部分が大きい。イスラエルと日本両国の企業のコラボレーションで、多くの相乗効果が期待できる」とSchindel氏は語る。

 イスラエル大使館経済部の経済公使であるNoa Asher氏は、イスラエルが2018年3月から開始した省庁横断型のデジタルヘルスケア・プロジェクトについて触れた。これは国民のヘルスデータを収集し、予防医療などに活用するもの。投資規模は日本円で3兆5000億円に達するという。「日本とイスラエルの経済交流は大きく進展しており、両国でコラボレーションできる機会は今後ますます増える」と展望する。

イスラエル大使館経済部の経済公使であるNoa Asher氏

医療機関の「外」で疾病リスクを低減

 経済産業省ヘルスケア産業課課長の西川和見氏は「日本が迎えている少子高齢化社会は、むしろチャンス。課題を見つけ、世界に貢献するイノベーションを生む土壌と見なせるからだ」と語る。同氏はイスラエルのデジタルヘルスケアの取り組みを踏まえ、経済産業省が進めているヘルスケア産業政策と各種のプロジェクトを紹介した。

 特に強調したのは、高齢化に伴う疾患のリスクを下げ、健康寿命を延ばすための統合的なアプローチである。具体的には、医療機関に加えて家庭や職場など生活シーンすべてにおいて健康にアプローチする考え方である。

 西川氏によれば次のような格好である。例えば特定の疾患に医薬品の解決だけでアプローチしようとすると、10年単位の時間が必要となる。だが、ITを駆使して産業界全体で協力し、患者予備軍の生活行動を変えて疾患を予防しようとアプローチすれば、数年、あるいは1年で効果的なサービスが生み出せるかもしれない。西川氏は「これからの時代はこのような統合的な方法が大事だ」として組織横断的に取り組むオープンイノベーションの可能性を示す。

経済産業省ヘルスケア産業課課長の西川和見氏