北東インドにおける日本脳炎流行の原因は、温暖な期間の延長、豪雨に伴う洪水により、媒介蚊の繁殖が促進されたためだ*4

 一方、流行域の拡大は赤道直下の国だけではない。2016年に発表された論文では、ヒマラヤ高原における日本脳炎ウイルスの出現と温暖化の関係が示唆されている*5

 日本脳炎の症例は、2004年および2005年は、標高1000メートルから2000メートルの地域において発生しているが、2006年から2008年には標高3000メートルの地域でも認められた。

 温暖化が進めば、北部やより標高の高い地域にも、流行が広がる。

 さらに、日本脳炎ウイルスを媒介する多くの蚊は、塩分に対する耐性があるため、温暖化やそれに伴う海面の上昇により、さらに流行域が拡大する可能性が示されている*6

 地球の平均気温は1906年から2005年の100年間で0.74度上昇しており、2100年には平均気温が推定1.8~4度(最大推計6.4度)上昇すると予測されている。

 温暖化やそれに伴う洪水などの気候変動は、予期せぬ感染拡大を起こすだろう。

グローバル社会における人の移動
都市化がもたらした感染リスクの拡大

 国連世界観光機関(UNWTO)によると、世界の海外旅行者数は、2020年の時点で年間14億人、2030年の時点で年間18億人に拡大すると予測されている。

 日本脳炎の流行域であるアジア太平洋地域では、2010年に2億400万人であった海外旅行者数が、2020年には3億5500万人、2030年には5億3500万人となると推計された。

 今後は、流行域に居住する住民のみではなく、旅行者へのワクチン接種推奨も必要だろう。海外旅行者数の増加により、トラベルクリニックの果たす役割は大きくなる。