コガタアカイエカを含むイエカ属は、ヤブカ属と異なり、水面に卵を産み、産卵コロニーをつくる。イエカ属の幼虫は、水田や灌漑農地において成長しやすいため、気候変動による洪水もまた、同様の環境をつくる。

 英国の医学誌『ランセット』2018年6月23日号に、“Protecting children against Japanese encephalitis in Bali, Indonesia”という論文が掲載され、インドネシアにおける日本脳炎流行が発表された。

 インドネシアなどの赤道直下の国では、媒介蚊の生息と活動には気温が高すぎるため、これまで日本脳炎の深刻な流行はないと考えられていた。

 しかし、インドネシアのバリ島では、2014年から2016年までの間に、408人の日本脳炎の症例が報告された*2

 インドネシアでは、2013年以降、毎年大規模な洪水がみられている。それまでは数年に一度であった洪水が、2013年以降は毎年発生した。

 この洪水は、地盤沈下と海面上昇、インフラの整備不足、都市化による森林伐採、豪雨等の気候変動に起因する。

 また、2006年に報告された研究では、インドネシアのバリ島で、急性ウイルス性脳炎や無菌性髄膜炎を発症した239人の子どものうち、86人が脳脊髄液中に日本脳炎に対するIgM抗体を保有していた*3

 IgMは最近の感染を示す抗体であり、日本脳炎の流行を示す。2006年のインドネシアでは、5月の地震の後、6月に豪雨と大洪水があり、自然災害が日本脳炎の流行を促進させた可能性がある。

 ほかにも、洪水によって日本脳炎が流行した地域がある。それは、北東インドだ。

 インドのアッサム州における年間の日本脳炎患者の報告数は、2010年154人、2014年744人と、約5倍に増えた。死者も、2010年41人、2014年160人と増加している。