しかし、もし、セネガルが1点取ってコロンビアと1-1の同点になったら、日本は1次予選敗退が決まる。また、ポーランドに追加点を取られても、1次予選は敗退する。さらに、日本選手が2枚のイエローカードを貰ってしまうと、決勝トーナメント進出は、セネガルと抽選という事態になる。

 幸い、長谷部を投入後、日本がボールを自陣深くで回し始めると、ポーランドは攻めてこなかった。試合会場からは、大ブーイングを浴びせられたが、日本とポーランドに間には暗黙の了解ができたようで、試合はそのまま“死んだ”。

 この状態で、もし、セネガルが1点取ってコロンビアに追いついたら、西野監督も日本代表選手も、猛烈なバッシングを浴びることになっただろう。要するにこれは、「神頼み戦術」であり、日本が決勝トーナメントに進出できたのは、「不思議の勝ち」以外何物でもない。

企業はやってはならない「神頼み戦術」

 10年程前、あるセラミックメーカーのコンサルを5年ほど行ったことがある。その企業は、売上の約9割がガソリン車などのエンジン部品で占められており、エレクトロニクス用部品は1割しかなかった。筆者は、その1割のコンサルを行ったわけだが、その時、もし、電気自動車(EV)の時代が来たら、この会社は破綻するのではないかという危惧を抱いた。そこで、自分のコンサルの領域を超えて、「業績が好調な今こそEV用部品ビジネスの探索を行うべきだ」と主張した。ところが、誰も「EVの時代など来るはずがない」と聞き入れてくれなかった。

 コンサルの最後には、社長に3回ほど直談判をした。1回目に社長は、「EVの時代は絶対に来ない」と言い張った。2回目に社長は、「EVの時代が来なければ良いと思う」と少し弱気な発言をした。そして3回目に社長は、「EVの時代が来ないことを願っている」と本音を吐露した。

 つまりこの会社の社長は、「EV時代が来ないでくれ」と神頼みをしていたのだ。ところが、自動車業界は、ここ数年で一気にEVの時代に突入していったことはご存知の通りである。あの会社は今、どうしているのかと気になって仕方がない。

 サッカーの監督も企業経営者も、「最良を望み、最悪に備える」べきである。決して「神頼み戦術」を行ってはいけないのである。

「不思議の負け」ではなかったベルギー戦

 一方、ロスタイムで逆転されたベルギー戦は、明らかな西野監督の采配ミスであり、「負けに不思議の負けなし」の典型例である。西野監督は、打つべき手を打たず、最善を尽くさなかったから負けたのだ。

 なぜ、そのことをセルジオ越後氏以外のサッカージャーナリストたちがもっと厳しく追及しないのか、筆者には不思議に思えてならない。そして、負けた原因を明らかにし、それを改善する努力をしない限り、進歩はない。それは、サッカーだけに限らず、企業経営でも同じである。したがって、ベルギー戦における西野采配は、企業経営にも参考になる格好のケーススタデイと言える。

 まず日本は、後半開始3分に、原口元気が先制点を挙げた。そのわずか4分後、今度は乾貴士が2点目を挙げた。つまり日本は後半7分で、優勝候補の一角のベルギーを2-0でリードした。この瞬間、多くの日本人がガッツポーズをし、まだ成し遂げたことがないベスト8への進出を夢見た。筆者もその一人であった。

(1)西野監督の第1の失敗

 何としても追い付きたいベルギーは、後半20分に、身長194cmのフェライニと身長187cmのシャドリの2人を送り込んできた。巨大な2人を同時に投入したということは、ロングボールを放り込むパワープレーを意図してのことだっただろう。

 ところが、西野監督は、ベルギーが長身選手2人を投入したにもかかわらず、何ら対策を取らなかったのだ。ベンチの控え選手には、186cmのデイフェンダー(DF)植田直通や182cmのDF槙野智章などがいたにもかかわらず、だ。なぜ、彼らを投入しなかったのか理解に苦しむ。これが、西野采配の第1の失敗である。

(2)西野監督の第2の失敗

 長身選手2人を投入したベルギーは、前のめりで攻めに転じ、後半24分にフェルトンゲンのラッキーなヘッデイングシュートが決まり、2-1となった。この1点で、明らかに日本選手に動揺が走った。それは、素人の筆者にも見てとれた。