なぜ原油価格は地政学リスクでも上がらないのか

原油市場に供給過剰の懸念、下落トレンドは時間の問題か

2018.08.03(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53726
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米株式市場のバブルは崩壊するのか

 一方原油価格の下落を望むトランプ政権にも意外な「落とし穴」がある。

 経済アナリストの市岡繁男氏は「原油価格が下落すれば米株式市場のバブルは崩壊する」と警鐘を鳴らしている(週刊エコノミスト2018年8月7日号)。

 企業収益が改善しない中で株式市場が好調を維持し続けているのは、社債発行を原資に自社株買いを企業が行っているからだが、米国の長期金利が上昇しているにもかかわらず信用スプレッド(国債と社債の金利差)が拡大していない。注目すべきは、金利上昇局面で社債の中で最も売られるはずのジャンク債と10年物国債の信用スプレッドが縮小していることだ。その理由を市岡氏は「原油価格が高騰している」ことに求めている。

 米ジャンク債市場における石油関連企業の割合は1割程度だが、「その動向はジャンク債市場全体に強い影響を及ぼす」と市岡氏は主張する。これが正しいとすれば、原油価格が下落すればジャンク債の信用スプレッドが拡大し株価が失速することになり、トランプ政権で続いてきた「高株価ラリー」は一巻の終わりとなる。

 米国の第2四半期の経済成長率は前期比4.1%増と好調だったが、ハイテク株の一部や住宅市場に不穏な兆しが出始めている(7月26日付日本経済新聞)。原油価格の下落 → 株価の下落 → 景気の悪化 → 原油価格の下落という悪循環が米国経済で生じれば、「逆オイルショックの再来」の再来も杞憂ではなくなる。

 米シティグループの専門家は「原油価格は1年以内に1バレル=45ドルまで下落する可能性がある」と述べた(7月25日付OILPRICE)。原油価格はその予測を上回るペースで下落するかもしれない。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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