IQOSをユーザーに使用してもらうためには、まずホルダーとそれを充電するためのチャージャーや内部を掃除する器具類をセットにしたキットを購入してもらわなければならない。

 同時に、ヒートスティックも必要なため、紙巻きたばこと同じように、全国どこでもいつでもユーザーが手に入れられるような広範囲の販売体制を作る必要があった。

 とはいえ、ユーザーだけでなく、たばこ販売店にとっても未知の商品で、扱ってもらうためにはIQOSのことを理解してもらう必要がある。

 さらにIQOSは、携帯電話やスマートフォンと違い、販売対象が成人喫煙者に限られる特殊な製品という事情もある。

 複雑で難しい販売プロセスを要するため、営業のスタイルから広報のあり方、広告の手法まで、すべてが異なる。そこでPMJは社内の体制を次々と変えていくことになった。

 「その取り組みとして、もっともわかりやすいのはコールセンターです」と井上副社長はいう。

 PMJは以前からコールセンターを設置していたが、ごく小規模のものだった。

 エンドユーザーがたばこに関する問い合わせをしてくることは稀で、たまに販売店から「発注した製品が届かない」とか「パッケージの文字が小さすぎて読めない」といった相談が来る程度だったからだ。

 「ところがIQOSの販売がスタートすると、使い方や故障に関する問い合わせがひっきりなしに入ってくるようになり、大急ぎでコールセンターを拡充しました」

 当時、売り出されていたIQOSには加熱ブレードが折れやすく、またチャージャーのフタがかちっと閉まらなくなるという弱点が発覚。その対応と改良にも追われることになり、相談件数は膨れ上がった。

 それに加えて、IQOSの正しい科学的知識と使い方をエンドユーザーに直接、伝える場として、「IQOSストア」を都内をはじめ全国主要都市に開設するなど、新しいジャンルの事業展開も始めることになる。