摂らなさすぎにも注意、1日に必要な食塩の量は?

適度な塩分摂取で夏を乗り切る

2018.08.03(Fri) 佐藤 成美
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生存に必要なナトリウム量は求めづらい

 では、生存していくために必要なナトリウムの量はどれくらいなのだろうか。日本人の食事摂取基準(2015年)では、「不可避損失量を補う量」が生存に必要なナトリウム量としている。これは、ナトリウムをまったく摂取しないときに失われるナトリウム量に等しい。

 だが、実は、この必要量については、十分には吟味されていない。これまでの欧米の研究などから、成人のナトリウム不可避損失量は1日に約600mgと推定されている。この考えをもとに、成人における男女共通の推定平均必要量は1日あたり600mgとされている。ナトリウム600mgは食塩1.5gに相当するので、ヒトの生存における最低必要な食塩の量は1日に1.5gということになる。しかし、これまでの研究の実験方法や結果の矛盾に異を唱えている研究者もおり、必要量を求めるのは難しい。

食塩。塩素(Cl)とナトリウム(Na)から構成されており、ナトリウム量(g)を約2.5倍すると食塩量(g)になる。

 生体のミネラルの必要量を研究している、元・東洋大学食環境科学科教授の西牟田守(にしむた・まもる)さんは、食塩の摂取量はガイドラインの6gであってもまだ少なく、現在の食塩の目標摂取量を再考すべきという見解を示している。

 西牟田さんらは実験で、食塩を1日に6g摂取した被験者と、10g摂取した被験者の汗に含まれるミネラル(ナトリウム、カルシウム、マグネシウム)の量を測定した。すると、食塩の摂取量が少ないほうが汗に含まれるナトリウム量が少なく、一方カルシウムやマグネシウムの量は多かった。

「1日6gの食塩摂取では、体内のナトリウムは不足するのです。汗中のナトリウム量が減ったのは、ナトリウムの放出を防ぐためです。また、体内にはナトリウムが不足すると、骨に蓄えられたナトリウムを使う仕組みがあります。このとき、カルシウムとマグネシウムも一緒に骨から放出されたものの、使われなかったため、血液中で多くなり、汗中のカルシウムやマグネシウムの量が多かったと考えられます」と西牟田さんは説明する。

 通常では、ナトリウムは便からもわずかに失われる。実験では、下痢をすると便の水分が増え、ナトリウムの損失量が増えることから、下痢のときはナトリウムが便の水分とも一緒に放出されることが分かった。また、食塩の摂取量を1日6gにすると、便の中の水分が減り、便秘しやすくなったという。便の水分量が減ったのもナトリウムの放出を防ぐためだろう。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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