摂らなさすぎにも注意、1日に必要な食塩の量は?

適度な塩分摂取で夏を乗り切る

2018.08.03(Fri) 佐藤 成美
筆者プロフィール&コラム概要

 食塩といえば、「高血圧の原因」とか「摂りすぎは体によくない」と減塩のことばかりが目についたものだったが、この夏は「塩分補給」という言葉をよく目にするようになった。若者に食塩について聞くと、「熱中症対策に効果がある」「スポーツをするにときは補給が必要だ」という答えが返ってくる。健康が気になる中高年は、食塩の摂りすぎは高血圧の原因であると刷りこまれているが、若者にとっては熱中症対策やスポーツをするときに補給が必要なものとする向きがある。食塩の捉え方が異なっているのかもしれない。

生体に欠かせないナトリウム

 食塩の成分のうち、生体に大きく関わるのはナトリウムだ。

 生体に必要なミネラル(無機質)は約20種類あり、そのうち、ナトリウムは、カルシウム、リン、カリウムに次いで体内に多く含まれ、ヒトの体内には、約100gのナトリウムが存在する。約4割は骨の成分として分布するが、残りのほとんどは細胞外液に存在し、浸透圧の調節や体内の水分量バランスの維持、pHの調節に重要な役割を果たしている。また、胆汁や膵液、腸液などの消化液の材料であり、神経興奮の伝達や筋肉の収縮にも重要だ。

 激しい運動などで大量の汗をかけばナトリウムが失われるが、通常でも体内のナトリウムは尿や便、皮膚から失われている。

 食事から摂取した塩分は、小腸から吸収され、99%は尿中に排泄される。その後、腎臓で、尿からナトリウムを再吸収することで損失した分が補われ、体内のナトリウム量が維持されている。通常の食事をしていれば、ナトリウムの摂取が不足することはないとされる。

 一方、ナトリウムの摂りすぎについては、高血圧など生活習慣病のリスクの上昇や重症化の懸念により、摂取の目標量が定められてきた。

 高血圧の予防や治療のための食塩摂取量は、世界保健機関(WHO)のガイドラインでは1日に5g未満、各国のガイドラインでも1日に6g未満を推奨している。日本でも目標量をガイドラインに近づけることは望ましいが、日本人の塩分摂取量は9~12gなので、これでは現状の食生活には適さない。そこで、厚生労働省の日本人の食事摂取基準(2015年)では1日に男性8g未満、女性7g未満を目標量としている。

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サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。


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