ワンダなどの中国企業が東南アジアの南の離島・ランカウイ島に、巨大リゾートを建設する背景には、実は理由がある。

 一つは、ナジブ前政権発足以来、中国が9年連続でマレーシア最大の貿易相手国になっているだけでなく、中国にとってもマレーシアは東南アジア地域で最大の貿易相手国になっていることが挙げられる。

 両国間の貿易総額は年間1000億ドル(約11兆円)を超える”蜜月関係”にあり、この強固な経済関係を裏づけているのが観光だ。

 マレーシアへの中国人の観光客は年々増加し、マレーシア政府によると、 2017年には約150万人に達し、今年は400万人が見込まれ、2020年までには800万人になると予測されている。

 ランカウイ島は、豊かになった中国人富裕層のバカンス先として人気が高く、巨大リゾート計画はこうした中国人の「南の島の別荘」として、誘致されていることが背景にある。

 ギャラリーのスタッフは「購入者は、シンガポールにマレーシア、中国などから」と説明するが、「実際はその多くが、中国からの大陸人」(地元不動産業者)と言われている。

 しかも、同不動産は「フリーホールド(Freehold)」で、外国人の所有を認めないマレーシアの他の物件とは異なり、土地と建物の所有権が永久的にオーナーに所属する。

 さらに、中国のワンダなどがランカウイ島のリゾート開発に興味を示す理由は、ランカウイ島が、アンダマン海に浮かび、マラッカ海峡に繋がっていることも挙げられる。

 一帯一路の海のシルクロードにおいて、原油の90%を海上輸送に依存する中国にとって、マラッカ海峡は極めて重要な戦略的海上路。中国の一帯一路の「生命線」ともいえるからだ。

 一帯一路を構想する習国家主席と親交の深いワンダの創業者、王氏が絡む同プロジェクトの背景には、中国の国家的野望も見え隠れする。

 こうした様々な背景で、住民だけでなく、マハティール氏も中国の巨大リゾート開発計画は「地元に有益ではない」と批判しているわけだ。

 たかがリゾート、されどマラッカに繋がるランカウイ。ここ赤道直下の南の深海には、中国の深慮遠謀が隠されている。

(取材・文 末永 恵)