労働者も消費者も、同じ一人の人間。

 近年、学校の先生は過酷な労働環境を強いられていることが、広く知られるようになった。部活の顧問はしなきゃいけないし、PTA活動にも参加しなければならないし、地域にお祭りがあれば不良行為がないか見守りにいき、と、大変な重労働。しかも、書類仕事が多すぎて子どもの様子を見る余裕がない、という、実に皮肉な状況が生まれているらしい。

 文科省から、教育委員会から、いじめはないか、昨今の子どもの状況はどうか、といった調査やアンケートがひっきりなしに来て、いちいちそれに対応しなければならない。いじめ対策をしっかりしろ、という上からの厳しい指導に対応するために、書類に首ったけになって、子どもと向き合う時間を失うという、実に皮肉な状況となっている。

 いじめを減らしたいなら、また子どもの指導を充実させたいなら、先生たちに労力的時間的余裕を確保し、子どもとじっくり向き合える時間と体力こそを与えるべきなのに、現実にはその逆なのだというのだから、こんなに矛盾した話はない。

 しかし、こうしたことはどこの企業にも進行中の出来事のようだ。CSRだとかコンプライアンスだとか、あらかじめ対応しなければならない仕事が膨大に増えて、肝心の製品やサービスを改善し、充実させる余裕さえ失っている、というボヤキを聞くことが多くなった。

 そして、もう1つ、働く人たちを苦しめている問題がある。クレーマーの問題だ。 

 UAゼンセンによる実態調査によると、百貨店やスーパーに勤める5万人に対するアンケートで、7割以上が来店客からの迷惑行為を経験していたという*1。暴言、説教、威嚇などの対応で追われ、中には土下座を要求された事例もあるという。たった一人のクレーマーに、社員がずっと張りつくことになる労力、負担感、疲労感は大変なものだ。

*1(速報版)悪質クレーム対策アンケート調査結果 2017.10_Part1