時差の関係で午前中にはアジア各地へ電話やスカイプで連絡をとり、午後には欧州とのやり取りに時間を使うというのが1日の仕事のパターンになっている。

 午前中の仕事を終えるとお昼の休憩をとる。毎日、ランチは持参した弁当を施設内で食べるのがお決まりだ。

 毎日1つか2つほど会議が入る以外、何かに拘束されることもなく、自分のペースで仕事を進めていく。そして遅くとも午後6時前の明るいうちにオフィスを出るというのが、佐藤さんの毎日の流れだ。

 「それでも会社を出るのは遅い方です。特別な実験に関わっている人を除けば、夕方5時を過ぎて会社に残っている人はほとんどいませんね」

 スイスの日没は、取材に訪れた6月の半ばで午後9時半ごろ。ほとんどの社員が明るいうちに自宅に帰り、家族や友人との食事の時間をゆっくりと過ごすという。

 「バカンスに数週間の休暇を取るのは当たり前ですし、子どもの誕生日に休みを取る人も珍しくありません」

 「私にとってフィリップモリスは3社目で、他の2社も外資系企業でしたが、さすがに家族の誕生日だからと休みを取る発想はありませんでした。こちらに来てみて、ワークライフバランスということを考えさせられました」

 残念ながら佐藤さん自身は単身赴任のため、会社から帰っても家族の団らんを持てないが、スイスに来てみて東京の働き方との違いを強く実感しているところだ。

家族・友人との団らんと仕事の効率化の関係

 日本人からみれば、ここでの働き方はまるで理想を絵に描いたようだ。だが、現地で生まれ育った人たち、ことに研究者の人たちは、この働く環境をどのように感じているのだろうか。

 生物学が専門で、主に喫煙が遺伝子に及ぼす研究を指揮するニコラス・シエラ博士(44)に尋ねた。