CUBE外観。手前にフィリップモリスのロゴが見える

 日本の職場にありがちな、せかせかとした雰囲気はどこにもなく、時間がゆっくり流れているように感じられる。

 飲み物を片手に数人で話しているグループもあれば、1人で黙々とパソコンに向かっている人の姿も見える。そのほとんどがジーンズにポロシャツといったラフな服装だ。

 そのキューブで、1人の日本人が働いている。佐藤圭吾さん(39歳)だ。彼は今年の1月から、1年間の期限つきで日本から赴任している。

 「素晴らしい景観でしょう? こんな素晴らしい施設に勤務できて、私は本当に恵まれていると思います」

 佐藤さんによると、キューブでは「勤務時間」というものを意識することはほとんどないという。

 「いつ会社に来て、いつ帰宅するかは、ほとんど個人の裁量に任されています。勤務時間のことで会社から何か言われることはなく、問われるのは成果だけです」

 ここに勤務する科学者やエンジニアたちはそれぞれが来たい時間に来て、帰りたい時間に帰宅する。

 「早朝7時に来る人もいれば、ゆっくり10時ごろに出てくる人もいます。仕事をしている途中でも、ちょっとジムに行ってくるよとか、湖で釣りをするといってオフィスを離れる人もいますよ」

 キューブを含むフィリップモリスの関連施設が集まる広大な湖畔の一角に、ボートハウスを備えた船の係留場があり、そこに釣り好きな社員の保有するボートが数隻浮かんでいる。

 アイデアに詰まったり、気分転換をしたい時には沖に出て、しばらく糸を垂らす研究者も珍しくないという。

 「数人でボートに乗って、海の上でアイデアを出し合ったり、議論したりする人たちもいますよ。私はそこに参加したことはありませんけど、日本では考えられない働き方ですよね」