3Dプリンター製の人工関節(出所:GE ウエブサイト) すでに3Dプリンターを用いて作られたインプラントが実用化されている。インプラントは3Dプリンターの長所が生かされる。

 3Dプリンターの未来と限界について考察している。前回は限界部分に焦点を当て、大量生産の自動車を作る時代はやって来ないことを示した。

 しかし、じわじわと実用例が増えてきている3Dプリンターの実情を見ると、応用範囲が今のところ限定的であるとはいえ立派な産業技術に育ってきている。

 ではどのような分野で活躍が期待されているのだろうか。

3Dプリンターの性質

 まず、より高度な製品を製造するのに使用される金属3Dプリンターに関して説明しよう。

 3Dプリンターは金属の粉の上をレーザーや電子ビームを走らせることで、形状を作っていく。レーザーや電子ビームが走った部分が溶け、周囲の溶けた金属と塊を作っていくが、これを何層も繰り返すことで3次元の形状が出来上がっていく。

 理論上はどのような形状でも作れるが、現状ではスピードに難があり、コスト的に決して安い製法ではない。3Dプリンターの性質をまとめると以下のようになる。

(1)空洞を作るのが得意

 他の製造方法では、外部からアクセスできるような空洞しか作ることができない。それでは、空洞の形状や複雑さには限界があった。

 3Dプリンターでは断面を重ねていくように製造するため、完成した時に外部からアクセスできない空洞のある製品も製造できる。つまり、どのような形状の空洞でも自在に作れるのだ。

 さらに、大きな空洞のある製品ほど他の方法に比べてコスト競争力が高くなる。3Dプリンターで溶かす金属部分の割合が少なくてすむからだ。

 これまでの製造方法では苦手だった空洞を3Dプリンターは得意としているのである。