また、休むことも大切だそうだ。人間、頑張ってばかりだと疲れてしまい、疲れると集中力が欠けてしまう。だからしっかり休む必要がある。

 しかし、休むといっても、マンガを読んだりテレビを見たりを、度を過ぎて何時間も続けると、それだけで疲れてしまい、休んだことにならない。だから、休むときは意識的に「何もしない」ことに決め、しっかり休むことに集中する工夫が大切だという。ノンベンダラリとするのと休むのは違う、というわけだ。

 そして最後に、いかに集中した学習時間を確保するか、工夫をすることだという。その弁護士によると、1日に3時間集中できた日があったらそれはかなり調子のよい日で、1時間程度しか集中できないことが多い、という話だった。机の前に座る時間を長くしてもダメで、集中力を高めるためのさまざまな工夫をし、集中した時間をいかに伸ばすかが大事。

 たとえば、学習方法についても、少しでも楽しく取り組めるように工夫することが大切。「最初の10分を集中できたら、休憩時間にクッキーを1枚おまけしよう」と自分でごほうびを用意したり、学習方法をちょっとしたゲーム感覚にしたりすることで、集中した状態にもっていけるよう、日夜工夫することが大切だという話だった。

パフォーマンスを引き出すために

 私はこの話を聞いてから、何事もバランスが大切なのだ、という考え方を知ることができた。まとめると、5つのバランスということになる。気晴らし(交友)運動家事休息、そして学習(仕事)。これらのバランスをとることで、学習や仕事のパフォーマンスを上げることがはじめて可能になるのだ。

 これは自分自身のパフォーマンスを上げることだけでなく、学生やスタッフ、部下のパフォーマンスを向上させるにも重要な考え方だと思い至るようになったのは、ずっと後のことだ。「勉強しろ!」と、勉強のことだけやかましく言ったって、子どもは勉強しない。「仕事をしろ!」と口やかましく部下を指導したって、やる気を出すわけではない。大切なのは「集中すること」であり、そのためには、周辺をしっかり充実させることが大事なのだ。

 学習にしろ、仕事にしろ、面白くなると「集中」はたやすくなる。むしろ、のめり込まずにはいられなくなる。すると、「ちょっとは休め」とストップをかけなければ休もうとしないくらい、集中する。ならば、その状態に持っていくにはどうしたらよいのか、ということを、親や教師、あるいは上司は考えることが大切だ、ということになる。