XF9-1は日本のジェットエンジン技術の到達点

 このように見てくると、世界のジェットエンジンは日本の産業技術によって支えられているようにも見える。もちろんXF9-1にはそのような日本の技術が使われる。

 XF9-1では、ジェットエンジンの性能の指標となるタービン入り口温度は1800度である。これは、世界トップレベルだ。

 IHIがエンジンコア部分を納入した際のプレスリリースを見ると、このタービン入り口温度を向上させているであろう「日本独自開発の金属材料」、「セラミック基複合材料」という単語が目に入る。

 「日本独自開発の金属材料」はボーイング787の燃費性能を支える耐熱超合金であり、「セラミック基複合材料」は日本のみが素材を作れるSiC/SiC複合材である。

 XF9-1は、日本が育ててきた世界のジェットエンジンを支えている要素技術を結晶と言える。しかし、XF9-1の意義はそこだけに留まらない。

 日本は、優れた要素技術を持ちつつも、エンジン全体を開発した経験に乏しかった。これまで製造した戦闘機向けエンジンは推力5トンの「XF5」に留まる。

 確かにこのエンジンは、戦闘機エンジンに見えるが、推力5トンでは一流の戦闘機を飛ばすには足りない。

 それが、XF9-1では、推力15トンを超える一流の戦闘機を飛ばせるエンジン全体を開発したのだ。優れた要素技術を持つだけでなく、一流のエンジンを丸ごと作った実績も生まれた。非常に期待を持たせる出来事ではないか。