超合金やSiC/SiC複合材で作られる部品の使用環境は1600度以上。ニッケル基超合金の部品は、1150度以下に冷却する必要がある。一方、SiC/SiC複合材では冷却は1300度程度までの冷却で済む。

 この冷却にはエンジンの圧縮空気が用いられるため、余計に空気を圧縮する分だけ燃料を消費する。冷却を一部でも省略できればその分の燃費が向上する。

 エンジンの高温部の素材をSiC/SiCに変えると、それだけで数パーセントの燃費削減効果があるという。

 そのため、炭化ケイ素繊維は次世代のジェットエンジン高温部の素材として大いに期待されている。現在、炭化ケイ素繊維は日本でのみ製造されている。日本カーボンや宇部興産がニカロン、チラノ繊維という名前で供給している。

 SiC/SiC複合材のコストは高い。価格は同じ重さの金と同程度とも言われる。

 それでもメリットは捨てがたく、すでにGEの合弁企業CFMインターナショナルが新型737、A320用に開発した「LEAPエンジン」の高温部に使用されている。

図5 LEAPエンジンのSiC/SiC製部品(出所:GEウェブサイト(CFMインターナショナル提供))。タービンシュラウドと呼ばれる部品。日本製の炭化ケイ素繊維が用いられている。

 GE、サフラン、日本カーボンが航空機用炭化ケイ素繊維を製造するため、NGSアドバンスドファイバーという合弁企業を設立した。すでに量産部品のための炭化ケイ素繊維を製造している。

 炭化ケイ素繊維は、課題があるものの、次世代のエンジン性能向上のキーになる素材として、期待が大きい。

 GEが、日本カーボンと合弁企業を作って囲い込みをしているのは、その期待の現われだろう。